電線泥棒が「電柱から切断」SNSで話題 インフラに影響…「窃盗罪」だけで済むのか 他に考えられる罪は
千葉県鴨川市の漁港で、電柱から電線が切断されて盗まれているのが見つかった。千葉県の10月2日の発表によると、県南部漁港事務所と東京電力などが1日に確認したところ、電柱から約200メートルの電線が8本、計約1600メートルが盗まれたという。 被害総額は約400万円相当で、千葉県は鴨川警察署に被害届を提出した。電柱から電線が切断されて盗まれるのは珍しく、漁港の給油装置や公衆トイレが停電する影響があったそうだ。 それだけでなく、船に給油する装置に電気が通らず、給油できないのだという。これをうけて、SNSでは「インフラの電線盗むとか言語道断」と驚きの声も上がっている。 生活の重要なライフラインである電線を切って、電力の供給をストップさせると、どのような罪に問われるのだろうか。刑事事件に詳しい西山晴基弁護士に聞いた。
●様々な罪が考えられるも最も重い罪は窃盗罪か
――電柱から電線を切って盗んだ場合、どのような罪に問われるでしょうか 電線を盗んだことで窃盗罪に問われる可能性があることは言うまでもありません。法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される重い犯罪です。 さらに、電線を切断して停電を引き起こしたことについては、社会生活に不可欠な電気供給を断ち切る行為であり、その影響は甚大です。 そのため、社会インフラを破壊する行為としてより重い責任が問われてもいいように思います。 もっとも、停電を招いたことについては、刑事責任となると、法律上、電気事業法違反、業務妨害罪、器物損壊罪等にも問われる可能性はありますが、いずれも窃盗罪よりも法定刑が軽いものになります。 ※参考「電気事業の用に供する電気工作物を損壊し、その他電気事業の用に供する電気工作物の機能に障害を与えて発電、蓄電、変電、送電又は配電を妨害した者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」(電気事業法115条1項) 1個の行為が同時に複数の罪名にあたる場合、「観念的競合」(刑法54条1項前段)と言って、その中で最も重い罪の刑によって処罰されます。複数の罪名があると言っても、それらの罰則が合計された刑事処罰が科されるわけではないのです。 今回のケースでは、まず、「電線を切断して停電を引き起こした」という1個の行為が、器物損壊罪・業務妨害罪・電気事業法違反といった複数の犯罪にあたる(=観念的競合)と考えられます。 次に、電線を持って行った窃盗罪と、業務妨害罪・電気事業法違反との関係が問題となります。難しいところですが、「切断」により様々な支障を生じさせることと、その後の「持ち出し」とは別の行為と評価できそうですから、併合罪(刑法45条前段)と考えられそうです。 この場合、最も重い罪である窃盗罪の1.5倍(15年以内)までの範囲で法定刑が決まります(刑法47条本文)。