謎のスーパーフォーミュラマシンの正体は“新開発レース用エンジン”のテスト。ホンダ/HRCが詳細を発表、今後「外販の可能性」を探る
11月7日、ホンダおよびホンダ・レーシング(HRC)は『新開発レース用エンジンを鈴鹿サーキットでテスト』と題したプレスリリースを発行し、同日午前に鈴鹿サーキットをテスト走行したスーパーフォーミュラSF19車両の詳細について発表した。搭載されるエンジンはシビック・タイプR用の『K20C』エンジンをベースに新開発された『HRC-K20C』で、今後「外販の可能性」を探るという。 【写真】11月7日早朝の鈴鹿サーキットをテスト走行したホンダ/HRCのスーパーフォーミュラSF19 11月7日早朝の鈴鹿サーキットを走行したカーボン柄のスーパーフォーミュラSF19。ホンダ/HRC、無限のスタッフによってテストが行われたこの車両は、関係者によると市販車であるホンダ・シビック・タイプR用の『K20C』エンジンをチューニングしたものが搭載されているとのことで、注目を集めていた。 同日15時、ホンダ/HRCはプレスリリースを発行し、その詳細を明らかにした。スーパーフォーミュラの車両に搭載されたエンジンはシビック・タイプR用の『K20C』エンジンをベースに、低コストでありながら300馬力台から600馬力クラスまで、さまざまなレースカテゴリーへの対応を図り新開発された『HRC-K20C』となる。 ホンダの『K20C』エンジンは、2015年に登場したFK2型シビック・タイプRのために開発が行われ、先代のFK8型、そして現行のFL5型にも引き続き搭載されているエンジン。登場時には“タイプR史上最強”を謳い、ホンダ自慢のVTECとターボチャージャーを組み合わせ、2リッターの排気量ながら現行FL5型では330PSの最高出力と、420N・mの最大トルクを発揮する。 そんな『K20C』をベースに新開発された『HRC-K20C』は、一般道では考えられないサーキットならではの長時間のフルスロットル走行に耐えうる耐久性を確保したレース専用エンジンで、300馬力台のスペックAから600馬力クラスを狙ったスペックDまで、4つの派生を念頭に開発が行われた。 このうちスペックBに関しては、すでに北米のDE5型アキュラ・インテグラ・タイプSに搭載され、アメリカのツーリングカーレースである『TCアメリカ』のTCXクラスに5台が参戦したほか、6月のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムにも参戦しているとのこと。 ホンダ/HRCによると、エンジンのシリンダーブロックは量産品をベースに鋳造方法を工夫して強化しており、量産エンジンを生産しているアメリカ・オハイオ州のアンナエンジン工場にて製造。強化ピストン、コンロッド、オイルジェット、高強度ボルト、オイルバッフルおよび前述の強化シリンダー以外ほとんどは量産のK20Cエンジンと同じものだという。 それを経て今回鈴鹿サーキットでテスト走行を行った“スペックD”は、600馬力を絞り出すことを可能にした最上位エンジン。量産エンジン部品を流用しつつ、高出力化に必要な部分に補強を加え、ドライサンプ・ミッドシップマウントに対応しており、鈴鹿でのテスト走行は「成功」で終えている。 ホンダ/HRCは「異なる馬力クラスのさまざまなレースカテゴリーに対応可能な『HRC-K20C』は、高いポテンシャルと低コストを両立させるレース専用エンジンであり、HRCでは外販の可能性を探っていきます」としている。 [オートスポーツweb 2024年11月07日]