伝説的な物語になった「黒歴史」 ロータス・カールトン(2) 盗難被害から水没状態で発見
パトカーとして活躍したローバーSD1 3500も
ウェスト・ミッドランズ州で、リチャードと合流。以前と同じナンバープレートが張られた、ロータス・カールトンの鍵をお借りする。直列6気筒ツインターボエンジンは、すぐに勇ましいサウンドで目覚めた。 当初の愛車が放置された運河は、ここからさほど遠くない。「自分の記憶へ強く刻まれた事件になりました。社会の注目も高かったですね」。1999年に警察を退職したブライアンが、インペリアル・グリーンのカールトンを見つめながら口にする。 「毎朝、これを見かけなかったかと聞かれました。目立つクルマなのに、ナンバープレートも覚えやすい40 RAなんです。生意気でしたよね」 今回、一緒にご登場願ったのは、レストアを終えたばかりのローバーSD1 3500。ウェスト・ミッドランズ州のパトカーとして活躍してきた車両だ。1984年式で、当時でも旧式になっていたが、40 RAを追跡した可能性はある。 これを所有するのは、デビッド・ニューボールド氏。100km/hで走るには、ツインSUキャブレターの調整が必要になるらしい。彼と一緒に、メカニックのジェイミー・ウィリス氏もやって来た。 ブライアンはロータス・カールトンに乗り、かつて向き合った困難を回想する。「これは、当時の最先端でした。速さへ対応する手段が、われわれにはありませんでした」。だが今では、路上にはナンバープレートの読取りカメラが整備されている。
伝説的な物語になった黒歴史
1994年でも、V8エンジンを積んだランドローバー・レンジローバーより、特別なカールトンは余裕で速かった。SD1 3500には悪いが、動力性能には圧倒的な差がある。 6速マニュアルは、シボレー・コルベット ZR-1のものが流用されている。ロータスの技術者はトランスミッション・トンネルを加工し、シフトレバーの場所を確保した。 ターボチャージャーが回転数を高める前から、24バルブの直列6気筒ユニットはパワフル。リミテッドスリップ・デフと、チューニングされたサスペンションが、しっかり57.8kg-mの最大トルクを受け止める。 ただし、トラクション・コントロールはない。窃盗団がコントロールを失うことなく、11回も逃走できたことには驚いてしまう。 高速道路を降り、ウェスト・ミッドランズ州のとある商店街へ。現在は違うが、過去に窃盗被害にあった新聞店があった場所だ。ロータス・カールトンとパトカーのペアは、少なくない注目を集める。 かつてを知る地元の人が、「盗まれたクルマですか?」。と興味深げに聞いてくる。インペリアル・グリーンの落ち着いた4ドアサルーンへ、次々にスマートフォンのレンズが向けられる。 新車当時、40 RAのナンバーの1台は、ロータスにとってもヴォグゾールにとっても頭痛の種だった。黒歴史かもしれない。しかし時間が過ぎた今では、不謹慎だとしても、このカールトンの速さを裏付ける伝説的な物語になったようだ。 協力: ウェストマーシア警察、ブルーライト・ビークル保存グループ 執筆:ライアン・スタンデン(Ryan Standen)
ロータス・カールトン(1989~1992年/英国仕様)のスペック
英国価格:4万8000ポンド(新車時)/9万ポンド(約1818万円/現在)以下 生産数:949台(ロータス・オメガを含む) 全長:4763mm 全幅:1930mm 全高:1435mm 最高速度:283km/h 0-96km/h加速:5.2秒 燃費:8.1m/L CO2排出量:-g/km 車両重量:1690kg パワートレイン:直列6気筒3615cc ツイン・ターボチャージャーDOHC 使用燃料:ガソリン 最高出力:382ps/5500rpm 最大トルク:57.8kg-m/4200rpm トランスミッション:6速マニュアル(後輪駆動)
AUTOCAR UK(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)