都道府県を跨ぐ企業の本社移転は1万3,701社 転入超過トップは千葉県、2位は茨城県
2023年度「本社機能移転状況」調査
コロナ禍を抜け、企業の本社および本社機能の移転の動きが活発化している。2023年度に都道府県を跨ぐ本社・本社機能の移転が判明した企業は1万3,701社(前年度比3.3%増)で、前年度から増加した。 地区単位で最も転入超過数が多かったのは、中部でプラス174社。次いで、熊本県に世界最大の専業半導体ファンドリーのTSMCが進出した九州がプラス116社で続く。一方、転出超過数の最多は、関東のマイナス272社で、関東から他地区に転出が続いていることがわかった。コロナ禍でリモートワークが広がったが、その揺り戻しも起きており、まだ働き方改革は試行錯誤の段階にある。 産業別の移転企業数は、小規模事業者が多いサービス業他の5,254社で最多だった。次いで、情報通信業1,672社、小売業1,423社が続く。コロナ禍からの需要変化に合わせ、機動的に本社を移転した企業が増えたとみられる。また、リモートワークが定着しやすい情報通信業は、ランニングコストの抑制などで都心から地方への移転が続いている。 県別の転出入状況(転入-転出)は、転入超過数では千葉県がプラス104社でトップ。主に東京都から転出した企業の受け皿となった。2位は茨城県のプラス96社。首都圏近郊の製造拠点として北関東に工場を進出させる企業が多く、サービス業他、製造業、建設業が押し上げた。 転出超過数は、東京都がマイナス631社でトップ。次いで、大阪府がマイナス217社で続き、大都市から周辺都市への転出が顕著だった。 コロナ禍ではリモートワークやWEB会議が広がり、都心から地方に本社・本社機能を移す「脱都心」の動きが生まれた。だが、コロナ禍が収束すると製品やサービスの需要が急回復し、再び都心回帰の流れも起きている。 これまで本社移転は、需要対応やランニングコスト抑制が中心だったが、深刻な人手不足、採用難から従業員の働き方改革や改善を目的とした移転もトレンドに加わってきた。さらに、円安による生産拠点の国内回帰などで、周辺産業や企業を呼び込む大手メーカーの拠点進出が今後も各地で期待されており、企業の戦略に合わせた本社移転はさらに活発になる可能性が高い。 ※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の保有する企業データベース(約400万社)から、各年3月末時点で都道府県を跨いだ本社および本社機能の移転が判明した企業を集計、分析した。調査は、今回が初めて。