【全文】ピース又吉氏「似合ってますかね? 金屏風」芥川・直木賞受賞会見
《又吉直樹氏の囲み取材》
記者A:又吉さん、おめでとうございます。 又吉:ありがとうございます。 記者A:まず中学生のときに文学に出会った又吉さん、そして書き始めたときの又吉さん、そして今のご自身に言いたいことっていうのはどんなことでしょうか。 又吉:そうですね。読み始めたときは本当に教科書に載ってる芥川の『トロッコ』とかやったんで、うらやましいですよね、そこからなんぼでも読めるんで、どんどん読んだほうがええよっていう感じです。書き始めたときは、どうでしょうね。好きなように書いて、みたいな感じですかね。今はでも本当に驚いてますね。まだよくなんか状況分かってないみたいな感じですね。 記者A:やっぱり文学の神様っているんですかね。 又吉:文学の神様はどうなんですかね。本の神様はおると思うんですけどね。 記者A:先ほど、太宰さんのお墓に今回、2回行かれたと言ってましたけども、太宰さんのお墓では、今度行かれるときはどんなことを伝えたいですか。 又吉:いつも本当になんか勝手なこと言ってすいませんっていう気持ちでお墓参りしてるんで、ねえ、なんかあんまり自分のことは報告する予定はないんですけど、はい。でもお墓参りには行きたいと思います。 記者A:今回の受賞の喜びはお伝えしないんですか。 又吉:そうですね。自分のことはあんまり。いつもすいません、勝手なこと言うて大好きですっていう気持ちをいつも、で、線香あげにいってるんで。 記者A:じゃあ、より今回は大好きな気持ちを伝えられるという感じですか。 又吉:そうですね。本当に感謝してますね。はい。 記者A:作家と兼業されて、作家とお笑い一緒に兼業されてこの賞を受賞しましたけど、報われたなっていう気持ちってありますか。 又吉:いや、報われないな、とかもそんな思わないというか、しんどいのはもう当たり前やと思ってるんで、しんどいぐらいのほうが、はい、いいかなと思ってるんで、ええ。でも、本当に今日はうれしいですね。 記者B:又吉さん、まず今日は、どこでどのような形でこの受賞の知らせを聞いたんでしょうか。 又吉:今日はあれですかね。ホテルのオークラでのお店で、マネージャーと編集の方と一緒に。 記者B:何をしてらしたんですか。 又吉:とにかく待ってましたね。どきどきしながらどうなんかなって言いながら、あ、すごい緊張感なんやなっていう感じで。 記者B:で、その又吉さんのご自身の電話に連絡があった。 又吉:ありました。 記者B:はい。鳴ったときは。 又吉:携帯の画面にこう、誰からかかってきたか分からんように、僕の担当の編集の方からかかってきたらあかんかったっていうことやって聞いてたんで、それが見えへんように裏返しにして、取りあえず電話に出てみてどうか知ろうと思って、はい、やったんでね。でも、緊張してるけど、もちろんまだまだ未熟ですし、難しいと思ってたんで、受賞したって聞いたときはちょっと手、震えましたね。 記者B:電話でまず出たときに、どういう言葉があったんですか。 又吉:おめでとうございますっていう声やったんで、ああ、ありがとうございますという。 記者B:そのとき実感っていうのは。 又吉:え、いや、本当にもうびっくりして、あ、ちょっと手、震えてんな、震えへんようにせな、みたいな感じでした。 記者B:今、それから3~4時間たってきたわけですけれども、その受賞した前と受賞したあとと、なんか心身ともに変わったことってありますか。 又吉:そうですね。先ほど選考委員の先生方にあいさつさせていただいて、そこで「おめでとう」っていう言葉と、厳しいお言葉もあったんですけど、すごくちゃんと本気で読んでいただけたんやなっていうのが伝わってきて、すごく感動しました。昔からずっと読んできた先生方ばっかりなんで。はい。 記者B:今は何か違うところはありますか。数時間たって。 又吉:数時間たってですか。ちょっとまだ情報をよく分かってへん、ふわふわしてる感じですね。はい。 記者C:芥川賞作家と呼ばれることになりましたけれども、そのプレッシャーとか喜びみたいなお気持ちを聞かせていただけますか。 又吉:喜びはもう本当むちゃくちゃ、ねえ、僕がもし明るい人間やったら、本当に、ふうって言うてるんでしょうけど、あいにくこんな感じで生きてきたんで、なかなかあれなんですけど、でも本当にうれしいですね。 記者C:少し目が赤いように見受けられるんですけれども、例えば前の日寝不足とか、うれしくて泣いちゃったとかそういうことではないですか。 又吉:若干さっき乾杯を上で、シャンパン飲んでちょっと、先生方にちょっと緊張して口付ける程度のはずがちょっと2杯ぐらいいってもうたっていうのがあるんですけど。 記者C:酔いが回って。 又吉:すいません。 記者C:今日、ほかの受賞者のお2人と比べますと、一番テレビにも慣れていらっしゃるはずの又吉さんが一番緊張していらっしゃったように見られたんですが、どんなお気持ちで壇上に上がられました? 又吉:やっぱり僕が普段出てるテレビと違いますし、ちゃんとせなって、僕が一番苦手な、ちゃんとできへんから芸人になったんですけど、今日はちゃんとせななと思って。 記者C:もう1点だけ。ご家族、そして相方の綾部さんにはどんな言葉で伝えて、またどんな言葉が返ってきたんでしょうか。 又吉:母親には、受賞したよ、ありがとうってメール送ったんですけど、まだ返信はない状態で、で、父親も寝てると思うんで、あした連絡しようかなと思ってて。で、綾部、綾部この間財布を落としまして、で、ちょっと金貸してくれって言われて、2万貸したんですけど、そのあとすぐに財布にお金が入った状態で返ってきたんですけど、あの2万返さんでいいよね、みたいな感じのメールは来ました。 記者B:それに対しては。 又吉:まだ返信してないんですけど、ちゃんと返してもらおうと思います。 記者C:賞金100万円ですよね。 又吉:ほんまですね。 記者B:何に使うお気持ちですか。 又吉:どうしましょうかね。やっぱり、せっかくのありがたいお金なんで、貯金するよりはなんか使ったほうがええやろうなと思うんで、なんかそうですね。ご飯でも食べましょうかね。食べたことない。 記者B:食べたことない。例えば。 又吉:例えば、行ったことない国の料理とか、なんかそういうのを食べましょうか。 記者B:どなたと。 又吉:後輩2人と住んでるんで、パンサー向井とジューシーズ児玉とになるんですかね。 記者C:綾部さんは。 又吉:綾部ですか。綾部はちょっと好き嫌いが激しいんで、食うたことないもん食おうと思わないと思うんですよね。だからちょっと、はい、後輩と。 記者D:選考委員の会見で、山田詠美さんが代表していらっしゃいまして、『火花』は人生体験の元手がかかっているという評価がありました。どんなふうにお思いになりますか。 又吉:そうですね。やっぱり僕は文章を書くときに今回の『火花』はもちろん、小説なんで、物語なんですけど、やっぱり自分が知ってる感情であったりとか、知ってる風景を書いたんで、そういうふうに言っていただけるのはすごくうれしいです。 記者D:あと、先ほどおそらく選考委員の方とごあいさつしたと思うんですけど、そのときに厳しいこともちょっと言われたって、どんなことを言われたんですか。 又吉:それはでも僕にとって励みになるような、次回作、その次で、その声掛けてくださった先生の評価を覆るようなものを書いてほしいって言ってくださったんで、頑張りますと。 記者D:あと、今年でちょうど芥川賞80年で、何回か出てますけど、太宰第1回で落ちて、そのあと対談もされて敬愛されている作家で、朗読会も出た古井由吉さんも芥川賞作家で、そういう意味で芥川賞の歴史の中に、新しい場所に又吉さんがいらっしゃる。その80年の歴史の今、一番新しい場所にいらっしゃるっていうことに対しての思いって何かあるでしょうか。 又吉:やっぱり芥川賞って僕は毎年すごく注目してて、で、必ず毎回読めてるわけじゃないんですけど、上京してきてからもそうですし、中学のときから例えば僕と同じ名前の、又吉栄喜さんが『豚の報い』で受賞されたときも中学生やったんですけど、読んだりとか、ずっと芥川賞っていう、まあ古井さんもそうですし、中村文則さん、町田康さん、村上龍さんと僕が好きな作家さんが受賞されてる。直木賞ももちろんそうなんですけど、そこに自分が候補にしていただけただけで、もう本当に驚いてたんですけど。ええ、まだなんか実感ないなという感じですね。 記者D:あとは桜桃忌の日は禅林寺に行かれたんですか。つまり、候補作発表になった日は。 又吉:行きました。 記者D:あの日行かれたんですか。 又吉:はい。12日と19日とあと二十何日、3回ぐらい、6月は行きましたね。 記者D:桜桃忌の日は候補発表になった日だったんですけど、泣きましたよとか、何かそういう報告もされなかったんですか、なんか。 又吉:ちょっと雨降ってて、で、桜桃忌のときはやっぱり禅林寺にすごいファンの方がいらっしゃるんで、もう本当に短くあいさつだけして、はい、すぐ帰りました。 記者D:サクランボを埋めてきたりはしなかった。 又吉:そうですね。ほかの名前のとこにいつも皆さん、サクランボを埋めるんですけど、あれはどうなんですか。いいんですかね。 記者D:なんか、ちょっとなんかね。 又吉:何年か前行ったときは毎年来てるおじさんが「これもう1回供えたもんは食べていいんだよ」つって、目の前で食べてはりましたけど。「1日ぐらい置いたほうがいいんじゃないですか」って僕は言ったんですけど。 記者E:綾部さんとか芸人の仲間にこういうふうにお祝いしてほしいとか、こういうのをお祝いにおねだりしたいとか、なんかそういうのはありませんか。 又吉:綾部はよくなんか最近コンビ格差とか言われ、なんか自分で言ったりしてるんですけど、本当にはっきりと「時計を買ってくれ」ってこの間、2人きりのときに言われました。はい。 司会:それでは最後の質問でお願います。 記者E:逆に綾部さんからお祝いでおねだりしたいもんとか、ないんですか。 又吉:そうですね。綾部はなんでしょうね。なんかでも、次、トークライブとかするときにぜひお祝いの会にしたいなと思うので、はい。その日はお客さんがいっぱいになればええなと思います。 記者C:あらためて、又吉さんにとってこの小説を書くというのはどういうものなんですか。 又吉:そうですね。それは僕にとってほとんど、漫才とかコントやることと同じで、自分がやりたいことですし、で、それで人を楽しませることができるっていう、こんなにいい循環のものはない。確かにその途中に苦しいこともあるんですけど、でも僕はそういうのも含めて、すごく楽しんでやってます。 記者F:又吉さん、今回の『火花』、ひょっとすると映像化ですとか、舞台化の話が出るかもしれませんけども、それについてあらためて何かお考えとか希望とか。こんな人にやってほしいとか、主役を。 又吉:そうですね。やっぱり僕はすごい思い入れが強い作品なんで、その空気感みたいな、もし映像化、まだされるかどうか分からないですけど、もしされるとしたら、なんかそういう空気感みたいなものは反映されたらいいなとは思いますけど、具体的にこれが誰やみたいなのは、そうですね、なかなか10年ぐらいを描いてるんで難しそうやなと思います。 記者F:さんまさんが意欲を見せてましたけど。 司会:はい、すいません。そろそろ。 記者F:主役に。 又吉:そうですね。さんまさんはオーディションだけ呼んでくれ、みたいなことはおっしゃってくれましたけど。 記者G:受賞第1作いつごろ。 又吉:はい? 記者G:受賞第1作はいつごろ。 又吉:そうですね。そろそろ書き始めたいんですけど、それがやっぱり面白いものを書きたいんで、どれぐらいの時期に出せるか分からないんですけど、必ず、恥かいてもいいんで書こうとは思ってます。 記者H:すいません。又吉さん、いきなりですけども、先生と呼ばせていただいてもいいですか。 又吉:僕ですか。 記者H:はい。 又吉:別に(笑)、先生っていう感じでもないんですけれども。 記者H:又吉先生。 又吉:いえいえ。 記者H:響きはどうですか。 又吉:又吉先生、いや、その(笑)。ちゃんと受け取ることはできないですね、又吉先生っていう、はい。先生から一番ほど遠い人間やと思いますし、『火花』に書いてることもそっから遠いことやと思うんで。 司会:最後の質問でお願いします。 記者I:すいません。1回目の投票で、トップだったということを山田詠美さんがおっしゃってたんですけど、それについてお願いします。 又吉:いや、本当に読んでいただけたことがすごくうれしいですし、もちろん至らない部分というか、駄目なところももちろんあって、その指摘も今後、していただけるでしょうし、それを生かして超えていけるものを作りたいと思います。 記者C:今の気持ちを最後に一言で表してくださいますか。 又吉:めっちゃうれしいです。 女性:はい、ありがとうございました。 司会:はい、ありがとうございました。 又吉:ありがとうございました。ありがとうございました。 女性:おめでとうございました。 又吉:ありがとうございます。