日産ダットサン・サニークーペ1400SGX(昭和52/1977年10月発売・B310型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト093】
原点回帰でファンの心をつかんだ傑作車。最後のFR方式のサニーとして根強い人気を保つ
この連載では、昭和30年~55年(1955年~1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第93回目は、原点回帰のフォルムで人気を呼んだ、日産ダットサン・サニークーペ1400SGXの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より) 【写真はこちら】先代の210系と比較してかなりスタンダードなフォルムとなった。保守的とも言えるが、110系を洗練させたイメージでサニーファンを振り返らせた。(全7枚)
B110の人気で日産の顔ともいえる存在となっていたサニーだが、期待されたB210サニーは人気、販売ともに振るわず終わってしまう。それはB110型サニーの質実剛健さからエレガントさへ流れたことで既存ユーザーを失ったから・・・とも言われた。 そこで昭和52(1977)年10月に登場したB310サニーは、直線基調でシンプルな原点回帰ともいえるスタイルとなって登場した。ここで紹介するサニークーペ1400SGXはとくに若々しさと使い易さを訴求するモデルとして設定されたものとなっている。 ハッチバックスタイルを引き継ぐとともに、さらに幅広いユーザー層に訴求するような「マルチユースカー」にふさわしい使いやすさと落ち着きのあるスタイルイメージを打ち出したのだ。ファッション性を狙ったリアのオペラウインドウが特徴だったが、それでも日産車らしい骨太さが感じられた。 室内は、広い視界、可能な限り大きくした室内居住寸法、徹底したトータルカラーコーディネーションの採用などにより明るく落ち着いたイメージとなっていた。インパネを見るとメーターはオーソドックスかつスポーティな丸形で、SGX(及びGX)には6連式を採用しているのが注目される。 メーター自体も透過照明式として見やすさを増している。ステアリングホイールは、大型パッド付きの3本スポークとなっている。とくにSGX(及びGX)にはスポーティな革巻き風3本スポークステアリングが採用され、ドライビングの楽しさを感じさせるものとなっていた。 シートは前席にヘッドレスト差し込み式のローバックシート、後席にはクーペGL以上にはスプリットシートを採用している。また、後席両側にサイドボックスを設け、その中にはコーラ瓶が2本収納できるスペースがあった。クーペの後席シートバックを前倒ししたときには完全フラットシートとなり、広い荷室とできることでユーティリティを上げるなどの工夫も見られた。 搭載されるエンジンはB110サニーにも搭載されていたA12型の拡大版といえるA14型エンジンだ。1.4L直4OHVのシングルキャブレター仕様で、53年度排出ガス規制へ適合させるために改良酸化触媒方式やEGRによる「53年NAPS」を搭載している。 これを詳しく少し説明すると、NOxの低減のためにEGR(排出ガス再循環)量を増大するのが有効だが、従来の方式でのEGRでは増大とともに燃焼が不安定になるというデメリットがあった。今回は燃焼室の形状を変更し、燃焼速度を速めることによりEGRを増大しつつも安定した燃料供給を可能としている。 出力的にはトレードオフの関係になってしまい80ps/11.5kgmと非力さは否めなかった。ただし10モード燃費で14.0km/Lを達成するなど経済性に優れたものとなっていた。 サスペンションはフロントがストラット式を先代から引き継ぐが、リアは4リンク/コイル式に一新し、操縦安定性と乗り心地の向上を図っている。とくにリアサスペンションはそれまでのリーフリジッドから進化し、スタビライザーも装着されることにより、操縦安定性が増した。 ブレーキは前輪にディスクブレーキ、6インチマスターバック及びNPバルブ(圧力制御弁)を標準装着し、制動性能を向上させている。タイヤはSGX(及びGX)には165/70HR13のラジアルタイヤを装着している。 B310サニークーペは、おおむね好評をもって市場に受け入れられ、旧来のサニーファンを満足させたといっていいだろう。今回の紹介グレードとは異なってしまうが1.2L直4OHVのA12型搭載車は、最後のFRサニーということもあり、モータースポーツベース車としても好まれた。 エンジンをフルチューンすることによって富士グランチャンピオンシリーズ(GC)のサポートレー スのTS(特殊ツーリングカー)レースで活躍したり、昭和56年(1981年)の生産終了後も、ジムカーナやダートトライアルなどの参加型モータースポーツで好んで使用された。そういう意味でも重要な位置を占めたクルマであり、現在でも根強い人気のある車種だ。