編み物作家・伊藤浩子92歳「これが最後の海外訪問になるかもしれない。作品のイギリスV&A博物館での一般公開に合わせ、教え子16人と訪問」
世界の美術工芸品を収集しているイギリスのヴィクトリア&アルバート博物館(以下、V&A)。その東洋部に、2021年11月、編み物作家・伊藤浩子さんの「もみじの舞」と「竹林」の2作品が手編み作品として初めて収蔵された。その快挙については本誌22年3月号でも紹介した通り。 【写真】16人の教え子とともに 24年7月、いよいよ東洋部にて「もみじの舞」の一般公開が始まった。作者の伊藤さんは展示にあわせ、16人の教え子とともにV&Aを訪問。50代から93歳まで、平均年齢75歳のツアーとなった。 「これまで生徒さんたちとたくさんの国を旅してきましたが、92歳という私の年齢を考えると、これが最後の海外訪問になるかもしれない。そんな思いもあり、ぜひこの目で私の作品が展示されているところを見たいと思ったのです。 V&Aは長い歴史のある素晴らしい博物館ですが、東洋部門での編み物の収蔵は初めてのこと。それが私の作品であることに改めて感動し、涙が止まりませんでした」
5日間の滞在中には、感激の再会もあったという。 「私は終戦から2年後の高校時代、ルーマニア人の編み物作家・渡辺イルゼ先生に弟子入りし、創作活動の礎を授かりました。その時赤ちゃんだった先生の娘さんが、ベルリンからロンドンまで展示を見に来てくださったのです」 伊藤さんは今も月6回、30人ほどの生徒に指導を続ける。 「編み物は手先を使うし、細かな目を読むなど頭を使います。だから元気なのかもしれません」 11月26日から6日間、東京・銀座で作品のチャリティ・バザーが行われる。 「私の作品はもちろん、生徒さんの多彩な作品もたくさん。ぜひ観にいらしてください」 (構成=本誌編集部、撮影=Marcin Nowak)
伊藤浩子,「婦人公論」編集部
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