ドジャース優勝と大谷翔平に学ぶ、トップ選手を集めたチームが強いとは限らないワケ(安澤武郎 組織コンサルタント)
■大谷翔平から協働力を学ぶ
では、どうすればトップ社員同士での協働力を高め、最強のチームを作ることができるであろうか? スポーツでもビジネスでも「自分の成功」と「チームの成功」は完全に一致するものではない。これから自分でキャリア形成をする時代になっていくと、「自分の成功」を優先する人の比率が高まるかもしれない。 大谷翔平について語れる専門家は日本全国に増え続けていると推察するが、組織コンサルタントとして「大谷翔平の協働力」について解説しておく(野球でも協働力は必要だし、トップ選手が果たすべき役割を考える上でとても参考になる)。 (1)チームの勝利のために自分の役割に集中すること 大谷翔平はワールドシリーズ前のインタビューで、「まあ勝てばもうなんでもいいという状況なので、自分の状態がどうのこうのとか、変な話打てた打てないとか、それが有意義なアウトならオッケーじゃないかなと思うので、逆に言えばすべて勝ったか負けたかで決まるので、そこ次第かなと思います」と述べている。 「自分の役割を果たす」とは、その時その瞬間に「何をすればチームの勝利につながるか」ということを考え、判断し、実行することに他ならない。 人間は「恐れ」「見栄」「エゴ」など多様な感情によって迷い、間違い、失敗するという特徴がある。自分の感情に惑わされず、今すべきことに集中するスキルは協働力の基礎と言っても過言ではないであろう。 大谷翔平はどのような状況に置かれたとしても、目の前の次にすべきことに思考を向けようとしている。感情を完全にコントロールできる人間はいないが、高いレベルになればなるほど自分の感情との付き合い方を磨くことが大事になってくる。 (2)率先垂範で役割に集中する姿を示すこと 「自分の役割を果たす」とは、プレーを遂行するだけでなく、事前準備など自分でコントロールできることを全てやり切ることである。 ドジャースのベテラン投手カーショーは大谷翔平について、「彼を見ていると、彼の勤勉さがよく分かる。毎日が同じ。決して疲れた様子も見せず、愚痴をこぼさず、感じさせない。投手としてのリハビリも欠かさず、ウオームアップ、練習を繰り返し、本塁打を放ち、盗塁も増やす。その一貫性は評価に値する。細部へのこだわりと勤勉さ。見ていてクールだ」と述べている。 試合中だけでなく、事前準備から感情に惑わされず自分のすべきことに集中しているリーダーが存在するチームでは、メンバーが互いの頑張りを見て高め合うチームに育っていく。 (3)チームメンバーへの信頼を示す チームメンバー全員が全てトップ選手のチームは存在しないし、トップ選手であっても好不調の波はある。しかし、大谷翔平やドジャースの選手はインタビューを受ける時、チームメイトに対してポジティブなコメントを徹底している。「彼はまたやってくれるはずだ」という信頼を感じさせるコメントをする。 チームメンバーがミスをした時、ミスを責めるのではなく、そのミスをカバーすべき選手がカバーに集中することが大事だ。最善の仕事をしようとして挑戦したことについて、結果は全て受け入れることだ。失敗から学習をすることはあっても責めてはいけない。そこで、メンバーへの信頼を示す言動により、メンバーがチームの期待に応えようとより努力をする状況を作った方が最終的に勝利できる確率は高まる。 トップ社員がこれらの行動を身につけた時、最強チームが出来上がるのではないだろうか? 安澤武郎 株式会社熱中する組織 代表取締役・組織コンサルタント
プロフィール
1998年京都大学工学部卒、同年鹿島建設入社。ハンズオンで経営改革・戦略実行を支援する経営コンサルティングファームを経て2012年独立。2020年株式会社熱中する組織設立。経営者の右腕としてベンチャー企業から上場企業までの組織変革による成果創出を支援。複数社の社外取締役を歴任。中小企業診断士。事業承継士。一級建築士。著書:『京大アメフト部出身、オールジャパン4度選出の組織変革コンサルタントが見つけた 仕事でもスポーツでも成長し続ける人の「壁をうち破る方法」』『ひとつ上の思考力』『組織に「成長」と「成果」をもたらすマネジャーの教科書』。Xアカウント: @t_yasuzawa