ドジャース優勝と大谷翔平に学ぶ、トップ選手を集めたチームが強いとは限らないワケ(安澤武郎 組織コンサルタント)
【画像参照】図1:バスケのチーム成績とトップ選手比率の相関図
【画像参照】図2:サッカーのチーム成績とトップ選手比率の相関図
【画像参照】図3:野球のチーム成績とトップ選手比率の相関図
結果を見ると、野球ではかろうじて右肩上がりだが、サッカーとバスケではトップ選手比率があるラインを越えると、チーム成績は下がっている。 この論文によると、このスポーツ間での違いには「人と人との相互作用の度合い」が影響しているという。バスケやサッカーのように相互作用の度合いが高い場合に、トップ選手比率を高めすぎるとチーム成績が下がるのだ。 例えば、トップ選手比率が高くなりすぎると、バスケットボールの「アシスト数」「リバウンド数」などチーム内での連携に関わる数値が落ちていた。トップ選手はプライドがあってチーム内で競い合ってしまうのか、周りの選手と連携するよりも自分の力で決めようとしてしまうのか、連携力が落ちる要因はもう少し分析が必要だが、サッカーやバスケでは単に素晴らしい選手を集めただけでは勝てないということが言える。 一方で、野球はトップ選手を集めれば集めるほどパフォーマンスが上がる。その理由は、連携が全くないわけではないが、個人で完結するプレーが多いので、トップ選手の追加効果を得やすいという分析だ。 ただし、今年のドジャースのポストシーズンの状態は、必ずしもトップ選手の多さだけで説明することはできない。この論文の分析は「平均するとそうなる」というだけであって、過去にトップ選手を集めて負けたチームも存在する。 戦力だけの比較でいけば、ワールドシリーズは4勝3敗で拮抗したであろうが、ドジャースは4勝1敗とヤンキースの良さを発揮させずに勝ち切った。それは、ドジャースのトップ選手がチームプレーに徹し、全員が100%の力を発揮したことが要因であろう。
■ビジネスでも必要性が増している協働力
この論文は、ビジネスにおいてマネジメントを考える際にも多くの示唆を与えてくれる。 ビジネスにおいて、チームのあるべき姿は時代と共に変化をしてきた。かつては似たようなスキルを持った人が集まり、繰り返し同様の成果を挙げることが目標とされていたが、タコツボ現象や官僚主義に陥るケースも多く、より柔軟で機能横断的な協働が推進されるようになってきた。 また、イノベーションが求められる環境では、多様なメンバーが融和し、未知の世界を探索し、新たな価値を生み出す上でプロジェクト型の組織形態が増えている。 弁護士事務所のように高度な専門性を持つプロが「個々の仕事で完結する」ビジネスでは、優れた個を育てることが業績へのインパクトを与える重要な活動になる。しかし、プロジェクト型の組織では「人と人との相互作用」の度合いが高く、バスケやサッカーと同じように「協働力」が重要になってくる。単にトップ社員を集めるだけで成功できる確率は低いということだ。