ワクチン不信の米国民が過去20年で激増 偽情報の拡散や政治化が原因か
米世論調査会社ギャラップは、小児用ワクチンを重視する国民が米国で大幅に減少していると報告した。 同社が最近行った世論調査によると、小児用ワクチンを「非常に」または「かなり」重視すると答えた回答者は69%にとどまった。この割合は、2001年には94%に上っていた。この20年余りで、米国ではワクチンに対する国民の認識が劇的に変化したことが浮き彫りとなった。 同国では近年、ワクチン接種に対する消極的な姿勢が各所で見られるようになった。例えば、南部ルイジアナ州保健局では、職員が新型コロナウイルスやインフルエンザ、エムポックス(サル痘)といった特定のワクチンの接種を一般市民に勧めることが禁じられている。 なぜこのような現象が起きているのか、そしてこれはなぜ重要なのだろうか? その答えは単純ではないが、医療と政治の癒着(ゆちゃく)など、複合的な要因が影響していると考えられる。 伝統的に、ワクチンに対するためらいは常に社会にある程度存在していた。だが、一般的にはワクチンは数多くの疾病を予防する、科学の飛躍的な進歩として称賛されてきた。 例えば、米国では2000年に麻疹(はしか)の根絶が宣言された。ところが、海外渡航が増えたことや、子どもに麻疹の予防接種を受けさせない親が増加していることなどから、同国では2024年だけで300人近い感染者が出ており、その大半がワクチン未接種者だった。病原体に対する免疫を持つ人が一定の割合に達すると、その感染症が広がりにくくなる「集団免疫」の状態にあれば、感染者数はゼロかそれに近い値になるはずだ。麻疹では、人口の95%が予防接種を受けた場合に集団免疫が成立する。 数年前に新型コロナウイルスが大流行した際には、ワクチンに対する賛否が社会を分断し、接種を拒否する人が前例のない水準に達した。ワクチンの義務化を巡っては、米国の保守派は、政府が権力を乱用し、個人の自由と身体の自律を脅かしていると警戒。一方、左派の政治家は、公衆衛生を促進する機会だと説明した。これにより、多くの国民がワクチンの安全性や有効性に疑問を抱くようになり、共和党と民主党の間には深い溝が残ることになった。 民主党の支持層に比べ、共和党の支持層が新型コロナウイルスワクチンを接種したり、好意的にとらえたりする傾向がはるかに低いのは驚くべきことではない。実際、ギャラップの調査では、子どもに予防接種を受けさせることは非常に重要だと考えている回答者は、共和党支持者と同党寄りの無党派層では26%にとどまったのに対し、民主党の支持層では63%に上った。この差は2001年時点では4ポイントしかなかったが、今回の調査では37ポイントに拡大した。