【感染症ニュース】梅毒の症状進行で立てない・真っ直ぐ歩けない… 2024年第50週(12/9-15)までの累積患者14,111人(一部再掲)
国立感染症研究所の2024年第50週(12/9-15)速報データによると、今年の梅毒の累積患者報告数は、14,111人となっています。前週からは、181人増加し、2024年の累積患者数は、過去最多であった2023年の14,906人とほぼ同程度となる見込みです。梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。 【2024年】12月に注意してほしい感染症!インフルエンザの動向に要注視マイコプラズマ肺炎は過去最多を更新医師「首都圏は伝染性紅斑に注意」 ◆梅毒の症状は? 梅毒に感染すると、性器や口の中に小豆から指先くらいのしこりができたり、痛み・かゆみのない発しんが手のひらや身体中に広がることがあります。また、これらの症状が消えても体内には病原体が残っているのが特徴で、治療しないまま放置していると、数年から数十年の間に心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、時には死に至ることもあります。 ◆感染症に詳しい医師は… 感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「梅毒に感染している方の診察結果をみる機会がありました。症状は、立てない・真っ直ぐに歩けないなどの症状があり、神経梅毒の疑いがあります。詳細な検査はこれからとのことですが、髄液の中にも梅毒の細菌が検出されていますので、最初に症状が出てから何年も治療を行わなかった可能性があります。こうした患者の方は最近では珍しいですが、梅毒の流行が広がることで、中には重症の患者が増えてくる可能性もあり、注意が必要です」としています。(※神経梅毒…梅毒トレポネーマが中枢神経系に浸潤した状態であり、どの病期でも起こりうる。早期神経梅毒には、無症候の場合と、髄膜炎や脳梗塞等を呈する場合がある。更に、晩期神経梅毒に至ると、脊髄癆(せきずいろう…歩行障害や感覚障害など中枢神経系等の慢性疾患)や進行麻痺(記憶力の衰えなど認知症のような症状)を呈する。 ◆妊娠中の感染は特に危険 また、安井 医師は若い女性の感染者が多いことについて、「妊娠している人が梅毒に感染すると、母親だけでなく、胎盤を通じて胎児にも感染することがあります。その結果、死産や早産になったり、生まれてくる子どもの神経や骨などに異常をきたすことがあるので、注意が必要です。生まれた時に症状がなくても、遅れて症状が出ることもあります。これから、妊娠・出産を考えている方で、感染の予防や、感染への不安がある方は、検査をして早期発見を心掛けてください」としています。 ◆梅毒の検査は医療機関や保健所などで 梅毒の検査は、一般的には 医師による診察と血液検査(抗体検査)で判断されます。地域によっては、保健所などで匿名・無料で検査できるところもあるので、感染が気になる方は相談してください。 ◆梅毒は治る病気。適切な治療を かつては治療薬がなく、死に至る病気とおそれられていましたが、ペニシリン系の抗菌薬が開発されてからは、治療が可能となりました。通常は内服薬が処方されますが、症状が良くなっても病原体は体内に潜み続けるので、医師の許可が出るまでは薬を飲み続ける必要があります。 ◆予防にはコンドームの使用を。しかし、過信は禁物 梅毒は性交渉などで、感染部位と粘膜や皮膚が直接接触することでうつります。予防のためにはコンドームの使用が進められますが、100%予防ができるわけではありません。また、完治しても再び感染する可能性があるので、予防については、常に気を使うことが重要です。 引用 国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2024年第50週 厚生労働省HP 梅毒 取材 大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏