手漉き文化伝え30年 丹後和紙の里、大江の伝承館
京都府福知山市大江町二俣二の大江町和紙伝承館が、今年で開館30年を迎えた。江戸時代から漉(す)かれてきた丹後和紙(丹後二俣紙)の歴史や技術を伝え続けており、30周年記念の各種イベントを企画。手漉き和紙の文化を発信する情報基地として、更なる利用の促進を図っていく。 大江では河守上地区を中心に、江戸時代から地場産業として優良な和紙が作られるようになり、明治時代の終わりごろには、旧河守上村だけで約180戸で行われていたという。 その後、洋紙の普及で和紙作りが衰退。現在市内で手漉き和紙作りをしているのは二俣一の田中製紙工業所だけになった。 伝承館は、当時の大江町が1994年7月に、田中製紙の隣に建設。木造平屋瓦ぶきで、広さは199・5平方メートル。展示室と体験工房からなる。 館のシンボル・展示室は32角形のガラス張りで、和紙の製造工程を、実際に使われた用具や写真などで紹介する。田中製紙で漉かれた丹後和紙を使った書や絵画などの作品展示も随時開いている。 体験工房は、和紙の原料となるコウゾを使用して紙漉き体験ができるスペースで、大江の小学生が自分たちの卒業証書に使う和紙作りをする際も活用されている。 運営、管理については2003年から旧大江観光が行い、15年からは市の直営となっている。作品展の開催などの企画は、市の委託を受け、丹後二俣紙保存会が立てている。 現在は土、日、祝日のみの開館となっているが、丹後和紙の魅力を伝えるイベントが多く開かれ、観光客らが訪れている。 保存会の会長で、田中製紙5代目の田中敏弘さん(62)は「伝承館には国内のほか、海外からもたくさんの方々が訪れ、和紙作りの技術や大変さなどを知っていただいている。今後も目を引く企画を立て、和紙の魅力を伝えていきたい」と話している。