ハッシュパレットをアプトスに売却──疑問点や背景を吉田CEOに聞く【独占インタビュー】
日本市場、今後のIEOに与える影響
──今回、IEOで資金調達を行った企業が買収されるという初めてのケースになった。IPO(新規株式公開)での調達であれば、株主保護規定があるが、IEOの場合はそうした規定は現状存在しない。JBCAでIEO部会長を務めている立場として、国内市場への影響、今後のIEOへの影響をどのように考えているか。 IPOは法人、IEOはプロジェクトと主体が異なる取り組みと考えている。株式は運営会社の価値に対する評価であり、トークンはプロジェクトの価値に対する評価。今回の場合は、2つが1つの契約の中で絡み合っており、わかりづらい面があると思う。運営会社の株式の売却は、会社法上の手続きに則って行っていくべきことであり、チェーンの移行は、ホワイトペーパーに基づいて行われていくべきと考えている。 チェーンと運営組織の権利を完全に一体化するのであれば、株式会社によるトークン発行ではなく、DAO(分散型自律組織)や海外財団によるトークン発行でないとロジックが成立しなくなるが、現状の日本のIEOの制度では難しく、今後の課題と考えている。 影響については、今回は当事者であり、公的にコメントできる立場にない。個人的にはWeb3産業が発展していくためには、プロジェクトや企業が結びついていくことは不可欠と思っている。今、トークン発行体の株式上場の道がまだ開かれていないなかで、仮にトークン発行体のM&Aが否定されてしまうと、ビジネス拡大の道がふさがれてしまうのではないか。 日本市場で確固たる足場を築いていたとしても、グローバルな競争が重要になってくる領域においては、海外の有力企業は日本のWeb3企業を買収することによって、日本市場でのビジネスの垂直立ち上げを行うことができ、日本企業やそのエコシステム内の企業にとっては、グローバルマーケットへのアクセスチャネルを手にすることができる。 トークンは、価格に加えて、流動性が重要な要素だ。グローバルで競争力があるチェーンに統合していくことによって、流動性が向上する。同時に、今は日本市場に閉ざされているサービスがグローバルに接続されていくことも実現できると思っている。 ──今回、トークン保有者は「蚊帳の外」という声もあり、株式に比べて、トークン保有者の保護が不十分と見る向きもある。トークン保有者の保護は今後、どのように考えていけばよいと思うか。 今回の契約については、株式譲渡とチェーン統合の予定を一緒に発表したので、混乱を招いている部分があると思っている。前述したように、株式譲渡は会社法に則って行っているが、トークンに関しては、会社法、厳密にはコーポレートガバナンスに関するガイドラインのようなものが存在していないので、ホワイトペーパーに記載されたガバナンスルールに則ってプロセスを進めている。 パレットチェーンについてはコンソーシアムで決定することとなっており、そのプロセスも適切に進めていると認識している。我々としては、ガバナンスルールについてIEOを行なった3年前からホワイトペーパー内で明示したうえで、それに基づいてプロセスを進めていると理解している。 |インタビュー・文:増田隆幸|撮影:多田圭介※編集部より:一部本文を修正して、更新しました。
CoinDesk Japan 編集部