ハッシュパレットをアプトスに売却──疑問点や背景を吉田CEOに聞く【独占インタビュー】
トークン保有者の保護は?
──会社のM&Aについては、2社間の話であり、規制が存在するわけではないとのことだったが、トークンの交換については、当局とのやりとりはあったのか。 現状、トークンの交換について発行体に対する規制はないと認識しているが、金融庁やJVCEAには事前に説明を行い、それぞれから「利用者保護に十分に留意するように」とのコメントをもらっている。 ──株式を使った企業のM&Aでは、株主の保護規定があるが今回のようなチェーンの統合では、先ほど、発言があったように発行体に対する規制は存在しない。そのなかでトークン保有者の保護は具体的にどのように行ったのか。 今回、パレットトークンからアプトスへの交換は、契約締結前の直近7日間の平均値に基づいて等価交換する形でレートを定めて発表した。双方にその後、価格変動があっても、このレートは変わらない。実際、発表後にパレットトークンの価格は下落し、アプトスの価格は上がっているが、交換レートは発表時のレートが維持されるので、価格変動からユーザーを守る効果が出ていると考えている。 パレットトークンからアプトスへの交換に関する項目は、今回の交渉で一番時間がかかった部分だ。アプトスは過去にトークン交換の事例はなく、特にその原資の確保について議論があり、当初は交換にかかる金額がかなり大きかったことから、アプトス内で交換に難色を示す意見もあったと聞いている。アプトス側には、選択肢の1つとして、ゲームや万博関連の利用をアプトス・ネットワークに移行したうえで、パレットチェーンはサイドチェーンの形で維持し、その用途は今後検討というような棚上げ案もあったという。その場合、アプトス側はパレットトークンを交換する原資を用意する必要はなくなる。 だが、棚上げ案では、パレットチェーン、パレットトークンの価値向上は難しくなり、流動性も減少していく。そのため、我々としてはトークンの交換を強く求めてきた。最終的にはアプトス側に交換についてご理解いただいて、現在の形になった。パレットトークンと比較して流動性が高いアプトスに対して、双方の今後の価格変動にかかわらず、固定レートでの交換が保証されていることは、一定程度、ユーザー保護につながると考えている。 ──アプトスとの提携発表の前夜、一部の取引所から今回の契約に関する情報が発表されたがコミュニケーションの齟齬があったのか。 パレットトークンの取り扱いのある暗号資産交換業者にはすべて事前に説明を行い、適時開示事項として、10月3日9時に開示することも伝えていた。5社のうち、3社からは現時点での情報では「交換についての取り扱いを判断できるかどうかはわからないので、適時開示後にそのニュアンスで発表する」との連絡をいただき、1社からは「適時開示後に全面的に協力する旨を発表する」と連絡をいただいていた。 ただ1社だけが、開示時間を無視して当社への事前相談なく情報を出したため、残念に思っている。また、ユーザーに不安を感じさせてしまったことは非常に申し訳なく思っている。今後、こういったことが起きないようなコミュニケーションを強化したいと考えている。