「粧す」は何て読む?宝塚の男役になるスイッチは、まつ毛やもみ上げ…恥ずかしがり屋の私にとって、舞台化粧は武装であり仮面
100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第68回は「化けて粧う」のお話です。 (写真提供◎越乃さん 以下すべて) 【写真】まだ化粧迷走中の時代 * * * * * * * ◆子どもの頃からなじみ深い言葉 「お粧し」 これ何と読むかわかりますか? 読めなくて調べました。 答えは「おめかし」です。 子どもの頃からなじみ深い言葉なのに、漢字で書いたことはありません。 化粧の粧は、粧す(めかす)、粧う(よそおう)と読むようです。 身なりをかざり立てる。おしゃれをする。 といった意味です。 最近ついつい見てしまうのが、メイクのビフォーアフター動画です。 別人級のビフォーアフター動画がTikTokや動画サイトでバズっています。 メイクだけでこんなに別人になれるのかと、そのテクニックの凄さと変わりようについついハマって見ています。 化粧は、化けて粧う(よそおう)と書きます。 化粧で人は化けるのです。 もちろん私も。
◆自分の顔は描きやすいキャンパス顔 宝塚に入る前は、化粧はほぼしたことがありませんでした。 音楽学校の時もほとんどしていませんでした。 この顔なのにピンクのアイシャドーを塗っていました。 ピンクのアイシャドーは似合わないという事と、自分が腫れぼったい目だという事を、ピンクのアイシャドーでこの時自覚しました。 メイクについて何も知らなかったこんな人が、あの濃い宝塚メイクを毎日することになります。 当然おもしろいぐらい下手くそでした。 つけまつ毛が「咲きにくい」顔の為、まつ毛をどれだけ無駄にしてきたことか。 周りを見ればみんなどんどん素敵になっていくのに、私は全くダメで、時間ばかりがかかって、ちっとも成立しません。 鏡を見るのも嫌になるほどでした。 それでも毎日化粧をするので、瞼も慣れてきてくれたのか、まつ毛も少しずつ少しずつ咲くようになりました。 まつ毛もたくさん種類があるので、自分の顔と相談しながら合うまつ毛を探します。 自分に合うまつ毛と出会うまで、私はずいぶんと時間がかかりました。 人からおすすめされたまつ毛を何度も試し、試してはダメの繰り返し。 今まで何百のまつ毛とお別れしてきたことか…。 そして10年くらい経った時にやっと、私にはこれが良い気がする!という基本のまつ毛が決まりました。 そんな時、かねてからお慕いしていた瀬奈じゅんさんが月組に組替えでやってきて、まつ毛の話になりました。 「私はこれ!」と見せてくれたまつ毛は、何と私が決めたまつ毛と同じ物でした。 あぁやっぱりこれでいいんだ!と瀬奈じゅんさんと同じということで ようやく確信に変わるという… ひどく自分に自信がない人でした。 基本のまつ毛が決まったあたりからは、化ける楽しさに目覚めます。 自分の顔は描きやすいキャンパス顔だということを両親に感謝しました。 苦節10年のつけまつ毛との戦いで、腫れぼったい目にまつ毛を咲かせられるようになりました。 つけまつ毛は、目の形によって付け方が変わります。 私はうすーい奥二重なので、まずは二重にする事から始まります。 アイテープを使って二重を作り、そこに付けるのですが、ただ付ければいいというものではありません。 目のキワに付けたり、少し離して付けたり、丸く付けたり、切れ長に付けたりと、役によって付け方は変えていきます。 女役をやった時は丸く付け、男役の時は切れ長を意識して付けるようにしていました。 まつ毛に付ける糊も大事です。 付ける場所、手前に塗るか、奥に塗るかでまつ毛の咲き方が変わります。 あまり咲かせたくなければ奥に、バッチリ咲かせたいなら筋に沿って糊を塗ります。