ATMに行政書類の発行… 「コンビニは“過疎地の生命線”」 セブン-イレブンが外資に買収されるとどうなるのか
創業家とかねて交流が
ACTがHDに買収を持ちかけたのは、実は今回が初めてではない。HD内部の事情を知る経営アナリストが言う。 「ACTの共同創業者で現会長のアラン・ブシャール氏は、HDの創業家・伊藤家とかねて交流があるとされ、2005年には水面下で買収の話が出たものの、本気で取り合われず却下されたといいます。また20年にACTから正式に申し入れがあった際は、コロナ禍で立ち消えになった。今回は円安が進んだタイミングを狙われたとみられますが、HDが提案への対応を公表したのは、経産省が昨年8月、『企業買収における行動指針』を定めたことが大きい。指針では“真摯な提案には真摯に検討する”よう示されており、これを受けてHDは特別委員会を立ち上げたのです」 カナダのトロント証券取引所に上場するACTは80年、ケベック州に第1号店を開店。自らのブランド店舗「クシュタール」を展開しつつ、03年には米国「サークルK」の運営会社を買収。21年にはフランスのスーパー大手「カルフール」に約160億ユーロで買収を提案したが、食料安全保障の観点から仏政府が反対し、頓挫している。
「HDの経営的なプラスは、きわめて乏しい」
アジアや北米など世界に約8万5000店舗を持つセブンに対し、ACTは1万7000店舗ほど。メインは、ガソリンスタンド併設型店舗だという。 「ACTの24年4月期の売上高は692億ドル。うちガソリン事業の売り上げがおよそ4分の3を占めており、残りがコンビニなどの物販で成り立っています」 とは、流通情報誌「激流」の加藤大樹編集長である。 「その一方、利益は物販だけで半分に上ります。温暖化対策で化石燃料の使用が減り、EVが主力となりつつある中、ガソリン事業が限界に近づいているとみて物販、特に“食”に強いセブンを取り込みたいという狙いがあるのではないでしょうか」(同) とはいえ、 「この買収案からはHD側のメリットが見えてきません。現にHDは、公表した書簡でも“米国の独禁法に抵触しないために(ACTが)資産をどう減らすのか”などの疑問点がクリアされていないという趣旨のことを述べていますが、株式の買い取り額が上がって喜ぶのは株主ばかりで、HDの経営的なプラスは、きわめて乏しいと思われます」(同)