「エール」薬師丸ひろ子の好演 朝ドラ、ベテラン女優起用の基準とは
NHK朝ドラ「エール」が27日から第5週「愛の狂騒曲」に突入、ついに主人公・古山裕一(窪田正孝)が文通相手だったヒロイン・関内音(二階堂ふみ)の家に出向き、2人の物語が本格的に始まった。ここで効いているのが音の母・光子役の薬師丸ひろ子。母親としての存在感をしっかり見せている。朝ドラでは薬師丸のようなベテラン女優が主人公なりヒロインなりの母親役や、脇役でも重要な位置にキャスティングされることが多い。単純に年齢が役に合致するから、という理由だけでもないようだ。
キャスティング権持つ世代があこがれていた
薬師丸と朝ドラといえば、「あまちゃん」では能年玲奈(現・のん)演じるヒロイン、天野アキのあこがれの女優、鈴鹿ひろ美役を好演した。 「あのときは小泉今日子さんとの共演も話題になりましたね。キョンキョンと薬師丸さんが同じドラマに出ているのは往年のファンからするとたまらない。いまキャスティング権を持ったプロデューサーさんたちは、彼女たちがアイドルで輝いていた時代にファンだった世代。職権乱用的になるといけないので表向きは強調できないけれど、当時あこがれていた人たちを起用してみたいという気持ちは少なからずあるはずです。一方で、彼女たちの世代はこれからヒロインをやることはまずありません。ヒロインではないけれどヒロインを支える、なくてはならない重要な役というのは、彼女たちにとっても演じがいがあるのです」と話すのは、芸能プロダクションの40代女性マネージャー。 そのクラスの女優となればキャリアが豊富なことから場数も踏んで、さまざまな人々と仕事をしてきている。実力、実績ともに申し分ない。安心感は大きいものがあるだろう。
豊富なキャリアと知名度からくる安心感
「あとはNHKの朝ドラとなると、お茶の間の視聴者が見て顔と名前が一致するかどうかも大きいと思います。やっぱり主人公の親となれば、とくにF3層なんかにピンとくる人であって欲しいはず。でも、そこがある意味では主人公以上に難しい部分でしょう。顔を見ればみんながわかる人がいいけど、でも朝ドラでこれまで親役をまだやっていない人を消去法で探していこうとすると、これがなかなか見つからない」とは、民放放送局の50代男性プロデューサー。 「エール」では薬師丸ひろ子のほか菊池桃子が裕一の母・まさを演じ、薬師丸とはまたタイプの違う存在感を放っている。父・三郎役の唐沢寿明にも貫禄負けせずバランスが取れている。 また、昨年は「スカーレット」で実力派女優の富田靖子がヒロイン(戸田恵梨香)の母を演じ、その友人役を財前直見が好演していた。「なつぞら」は朝ドラ100作目ということで歴代ヒロインが次々に起用されて話題を呼んだ。ヒロイン(広瀬すず)の育ての母を松嶋菜々子、空襲で亡くなった生みの母を戸田菜穂が好演。さらに山口智子や鈴木杏樹、小林綾子らベテランの域に入ってきた女優たちが要所要所を引き締め、作品を華やかに彩っていた。 「薬師丸さん、菊池さんクラスになると10代、20代といった若い頃はアイドル的な人気も絶大だったわけで、その頃に応援していたファンの興味も引っ張ってこれる。もう一ついえば、いまの芸能界より昔の芸能界のほうが現場は厳しかった。そういう厳しい現場を経てきた人たちでもありますから」と話すのは、芸能プロダクションの60代男性幹部。 アラフィフ世代以上のベテラン女優は、やはり豊富なキャリアからくる信頼感やお茶の間における知名度からキャスティングするほうも安心なら観ている視聴者も安心ということなのだろう。 (文:志和浩司)