引退まで「1250本のラケットを一本も折らなかった」ラファエル・ナダル38歳の四大大会22勝より大切なこととは…「小さな村の良き人間として」
デ杯は特別なもの
「デビスカップはツアーの日常とは違う特別なものだった。いくつかの世代を越えて戦ってきたけど、僕たちの国の成功は家族のような関係性の賜物だと思う。僕はその雰囲気が好きだったし、すばらしい仲間たちを持つことができた」 そう語るナダルが、幸せな幕引きのための場所に、2019年の優勝以来遠ざかっていたデビスカップを選んだことは不思議ではない。 スペインの準々決勝の相手はオランダ。「これが僕にとって最後の大会だということは一切考慮しないで、チームにとってベストの選手を選んでほしい」とナダルは監督のダビド・フェレールに何度も伝えていたというが、昨年からチームを率いる元世界3位のフェレール監督は、3カ月間試合をしていないナダルをシングルスに起用した。
「僕が監督なら、僕を使わない」
相手は世界ランキング80位の29歳ボティック・ファンデザンツフープ。2年前に全仏オープンとウィンブルドンで続けて対戦し、ナダルは2試合ともストレート勝ちしたが、重い2年の月日が力関係を変えた。4-6 4-6のストレートセット負け。ナダルの後継者カルロス・アルカラスはエース対決に勝利したもののダブルスに敗れ、多くのファンが思い描いていた夢のシナリオはあっけなく砕け散った。 「もし今日チームが勝っていたとして、もし僕が監督なら、準決勝では僕を使わない」 寂しげな笑みのナダルの言葉が、ラストマッチの出来を物語る全てだった。しかし、人々の目に映っていたのはそんな現実ではなく、この1試合のためにナダルが捧げてきた献身だったに違いない。 22回のグランドスラム優勝、世界ランク1位の通算在位209週、ツアー優勝92回。「偉業」という言葉すら軽く聞こえる足跡だが、どれも史上最高の記録ではない。そのことは、ロジャー・フェデラー、ノバク・ジョコビッチとともに「史上最高の選手が3人同時に存在する」と言われた時代を生きた証ともいえる。
小さな村出身の、良き人間として記憶されたい
1万人のファンに見守られながらのスピーチで、最後にインタビュアーから「あなた自身は人々からどんなふうに記憶されたいですか」と問われると、こう答えた。 「タイトルの数や記録よりも、良き人間として覚えておいてほしいかな。マヨルカの小さな村の少年は、叔父がテニスコーチという幸運に恵まれ、どんなときでも力になってくれるすばらしい家族がいて、夢を持って一生懸命がんばってきた。そんな一人の少年が、夢見ていたよりもはるかに遠いところまでたどり着き、今この場所にいる。そう記憶してくれればうれしい」
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