社説:第2次石破内閣 熟議通じ丁寧な合意形成を
熟議を通じて一致点を見いだす民主政治本来の在り方を、取り戻す機会とすべきだ。 第2次石破茂内閣が発足した。衆院選を受け召集された特別国会で、立憲民主党の野田佳彦代表との決選投票の末、石破首相が選出された。 過半数割れにより少数与党内閣となり、3閣僚が交代するなど、難しい政権運営を迫られる船出となった。 第2次安倍政権から12年近く続いた「1強政治」からの転換ともいえよう。 安定多数を握る自民党を中心に、安全保障関連法など国民の間で賛否が割れる法案を数の力で押し通してきた。原発回帰を柱とするエネルギー政策の見直しなど、重要な政策転換を国会の十分な議論なしに閣議決定で進める手法も重ねた。 与野党が拮抗する国会では、批判を拒む強引な姿勢はもはや通用しない。対する野党は、行政府を監視する立法府の機能再建に努める必要がある。役割と責任が重く問われる。 自民は政権継続へ野党第3党となった国民民主党との連携を狙い、「自公国」の協議枠組みを設定した。多数派形成のキャスチングボートを握った国民は、首相指名の決選投票で無効票を投じて、事実上、石破政権の延命を助けた。解散直前に内閣不信任案を野党共同で提出しており、与党過半数割れに追い込んだ民意にそぐうのか。 きのう、玉木雄一郎代表は週刊誌に報道された女性問題で謝罪した。政策の財源問題を含め、浮き足だった党運営を戒めた上で、丁寧な説明と謙虚な姿勢が求められよう。 「年収103万円の壁」の見直しの公約実現を最優先するが、自治体からは地方の税収減を強く懸念する声もあがる。政権維持や国民民主の人気取りのための密室協議では、有権者の理解は得られまい。 総選挙の結果を踏まえれば、国会にまず求められるのは、企業・団体献金の禁止も含めた政治資金規正法の早期再改正にほかならない。 立民はいかに野党勢力を糾合し、小手先の修正で逃げてきた与党に抜本改革を迫れるか。野党第1党の力量が試される。 衆議院の17常任委員長は、野党側が選挙前の二つから予算委など七つを取った。1強体制では与党による審議打ち切りや強行採決が繰り返されただけに、野党主導による正常化を期待したい。 年末に向けて来年度の予算編成や税制改正が迫っている。米国大統領選ではトランプ氏の政権復帰が決まり、外交も波乱含みとなりそうだ。 石破氏は衆院選をふり返り、「党内論理を優先したことが厳しい結果につながった」と反省を述べた。 真に国民を向いて「納得と共感の内閣」として再始動できるか。真価が問われている。