音楽も本も、何でもそうですが、普段私たちが触れる成形されたコンテンツは、成形の過程で洗練されて世に出ています。その上澄みだけをすくって、さも全てを理解した気になってしまう人は非常に危険です。 　長い本を書ける人でなければ、短い本は作れません。詳しく書いた上でいろいろなところをカットして洗練させていく。それは「短い文章しか書けない」のではなく、長い文章を書く能力があるからこそできることです。 　「読める人」「書ける人」は塩梅を探ることができますが、短い文章しか読めない人は頭のメモリが乏しく、賢い人によって精査された簡単なものしか処理できません。そんな「賢い人とそうでない人の二極化」はこれからも進んでいくでしょう。そして、これは「お金を儲けられる人と儲けられない人」の違いにもつながっていきます。 ●　「簡単なものしか受け付けない人」 になっていく 　頭を使わない人は、時間もお金も搾取される側になります。搾取される側になりたくないのであれば、作ったものを与えられる側ではなく、与える側にならなければいけません。 　ただ、簡単なものばかり摂取し続けていると、簡単なものしか処理できない人になってしまいます。そして、簡単なものしか知らない人は、いいものを作ることができません。いや、その“簡単なもの”ですら、作ることができないのです。

　簡単なものばかり摂取し続けている状態とは、本当はフルコースの料理を提供できる店で、「舌が肥えてない人には、とりあえず肉に塩コショウかけて焼いておけばいいよね」と、簡単に調理された肉料理だけが提供されているようなものです。 　隣のテーブルではフルコースが出されているのに、自分のテーブルにはでかい肉しか出てこない……。おいしい料理が分かる人と、味の濃い薄いしか分からない人、その差はどんどん大きくなってしまいます。 　そして、複雑な味の違いが分からない人には、簡単でおいしい料理は作れません。もっと複雑でおいしい料理を知っているからこそ、味がわからない人に合わせて簡略化することが可能になるのです。 　教養があるユーチューバーの動画を見ていても、裏にある膨大な時間をかけたであろう努力に気付かない読解力では、賢い人にはなれないのです。 ●　現代で読解力が必要な理由 物理的にも“貧しい人”になる 　「そもそも、現代で読解力が必要か？」と考える人もいるでしょう。ファスト教養がはやるくらいだから、時間をかけずに、考える必要すらなく知識を得られるならその方がいいと。それは大きな間違いです。読解力がない人は、想像力が貧相になるだけではなく、経済的にも貧乏まっしぐらです。 　読解力のない人は、より簡単な話だけを求めるようになります。難しいことが理解できないからできるだけ簡単に、自分で考えなくても分かるものだけを欲するようになる。 　それに応えるように、賢い人は、難しいことを簡単にしたものを提供します。すると、どんどん賢くない人が量産されていき、それらを糧に賢い人が潤っていく。読解力がない人をうまく使って利益を得るという構図の完成です。