「年収103万円の壁」の見直し、埼玉県内の首長ら大幅な税収減を懸念…市民サービスに影響「市民や国民は納得しない」 取り組みには評価や期待する声も 定例会見の意見まとめ
国民民主党が提案している「年収103万円の壁」の見直しを巡り、地方自治体から意見表明が相次いでいる。県内の首長からは大幅な税収減になることへの懸念や反発が挙がる一方、取り組みや議論については肯定的に捉える声も。定例会見での意見をまとめた。 ■市民サービスが減る 国民民主の主張は、所得税が課税される年収を103万円から引き上げて、手取りを増やそうというもの。ただ、それによって国だけでなく地方自治体の税収も大幅に減るとされている。 さいたま市の清水勇人市長は「個人市民税で約300億円から400億円程度の減収が見込まれるということになる」と明かす。川口市では約125億円の減収になると試算され、奥ノ木信夫市長は「福祉や教育は簡単に削れない。125億円ものお金を国が補填(ほてん)してくれるのか」と懸念した。 坂戸市の石川清市長は「誰だって手取りを増やしたい。ただ、全国の市町村に影響を与えるのは違う。市民サービスが完全に減る」と反発。「減収分に相当する財源の確保は考えていただきたい」(上尾市の畠山稔市長)、「減収分は国がしっかり補填を」(桶川市の小野克典市長)との声が大勢を占めた。
日高市の谷ケ崎照雄市長は「国民にはいいことだが、市にとっては税収が下がる。穴が開いた部分はサービスを削らなければならないが、サービスを下げるというのを市民や国民は納得しないだろう」と指摘した。 ■議論の進展は期待 ただ取り組みを評価したり、議論が進むことを期待する声も少なくない。 「見直しはいいことだと思っている」(狭山市の小谷野剛市長)、「市民の手取りが増え、労働力不足解消にもつながるので肯定的に捉えている」(所沢市の小野塚勝俊市長)という声や、「かねてからいろいろな議論があった古くて新しいテーマ」(行田市の行田邦子市長)、「103万円で30年間続いていることは改善しなければならない」(斉藤芳久鶴ケ島市長)と、制度の見直しを求める意見も出た。 熊谷市の小林哲也市長は「これを機に、見直しも含めて税制議論が活発になれば」、戸田市の菅原文仁市長は「方向性としては間違っていない。働き方が多様化する中、選択肢がゆがまない制度が望ましい」と期待した。