「こんなことなら独身のまま正社員で働いていればよかった…」夫は単身赴任のワンオペ37歳パート妻、遺族年金見直し案に嘆き…70歳母は娘の行く末が不安で夜も眠れず【社労士が解説】
厚生年金に加入する会社員などが死亡した際に20代~50代の配偶者が受け取る「遺族厚生年金」について、厚生労働省が見直し案を示したことに物議を醸しています。内容は遺族厚生年金について男女差を是正するものですが、SNSを中心に「改悪」と反発する声も。年金相談会に寄せられた事例をもとに、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・CFPの角村俊一氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「1人で120歳まで生きる」ための貯蓄額
37歳の娘の将来が心配で夜も眠れない…
市役所で定期的に行われている年金相談会に1人の女性(70歳)が相談に来ました。相談内容は次の通りです。 「先日、37歳の娘から電話があり、遺族年金の見直しが話題となりました。娘はパート主婦で2歳と4歳の男の子がいます。『もし遺族年金が見直されると、例えば、私が55歳になったときに夫が死んだら、私は生活できなくなるのでは? 不安でたまらない』と言っています。 娘は独身の頃は正社員で働いていたのですが、夫が転勤になってしまい家のことがまわらなくなって泣く泣く仕事をやめました。今は近くのスーパーでパートで働いています。娘の夫も激務で大変そうです。 そんな中、遺族年金の話を聞いて、社会が子育てから介護まで女性に押し付けておいてあんまりではないかと思いました。娘は『こんなことなら独身のまま正社員でバリバリ働いていればよかった』と嘆いています。 正社員に復職しようにもまだまだ子育てには手がかかるし、私たち夫婦も離れて暮らしているので手伝うことができません。保育園も待機児童でいっぱいと聞きました。自分のことも心配ですが、娘たちの未来も心配で夜も眠れません。これから遺族年金はどうなるのでしょうか?」 相談員は遺族年金の見直し案について丁寧に説明しました。
遺族厚生年金の男女差是正へ
遺族年金は、一家の支え手が亡くなった場合に遺された家族の生活を支える保険給付です。制度設計上、男性が主たる家計の担い手であるという考え方が強く反映されていますが、厚生労働省は7月に開催された「第17回社会保障審議会年金部会」において、社会経済状況の変化や制度上の男女差を解消していく観点から、遺族厚生年金の見直し案を審議会に示しました。 見直しの方向性として打ち出されているのは、「20代から50代に死別した子のない配偶者に対する遺族厚生年金を、配偶者の死亡といった生活状況の激変に際し、生活を再建することを目的とする5年間の有期給付と位置付け、年齢要件に係る男女差を解消すること」(同審議会資料)。 つまり、性別にかかわらず、20代から50代に死別した子のない配偶者に対する遺族厚生年金を5年間の有期年金にするというものです。 【現行制度】 20代から50代に死別した子のない配偶者の遺族厚生年金の年齢要件に男女差が存在している。妻に対しては年齢要件が設けられていない一方で、55歳未満の夫には受給権が発生しない 【見直しの方向性】 20代から50代に死別した子のない妻に対する有期給付の対象年齢を現行制度における30歳未満から段階的に引き上げるとともに、新たに60歳未満の夫を有期給付の支給対象とする
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