台湾有事で自衛隊による邦人保護は可能か――立ちはだかる「事態認定」と「輸送手段」の壁
台湾有事では最前線の防衛と国民保護の任務を担う、陸上自衛隊第15旅団
2022年12月16日、政府は「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の戦略3文書を閣議決定した。「国家安全保障戦略」の策定趣旨は我が国が「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境のに直面している」からだとしている。情勢認識では、中国を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置付けている。 日本の安全保障にとり最大の懸案事項が中国による台湾の武力統一である。中国の習近平国家主席はいつ侵攻を決断するのか。米国のシンクタンクや軍関係者などが「最も可能性が高い」としているのは2027年である。それは、習主席が「4期目」をうかがうタイミングであり、人民解放軍の強軍化目標達成時期、そして人民解放軍創設100周年にも当たる年だからである。 台湾と沖縄県の与那国島との海峡幅は約110キロしかなく、日本と台湾の位置関係は極めて近い。東シナ海から太平洋に出るためには、この海峡を含めて日本の南西諸島周辺海域を通過する必要があり、同諸島は中国の軍事戦略上重要な第1列島線の一部となっている。さらに沖縄県の在日米軍基地は台湾支援の作戦基盤でもある。台湾有事の際、中国は台湾を海上封鎖し周辺海域で海上優勢を確保しようとするだろう。その結果、同海域は中国軍や米軍の作戦海域となる。
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山下裕貴