【大岩ジャパン総括】879日――紆余曲折の航海を続けた2年半の物語。未来に残したレガシーとロスへの宿題
結束力と一体感にあふれた好チームだった
振り返れば、激動の2年半で思ったように事が進んだ時期は一度もない。それでも、本大会では難敵が揃うグループステージを3連勝。パラグアイに5-0と圧勝し、マリとイスラエルに1-0で競り勝ち、グループを首位突破。8強入りを果たした事実と足跡は、日本サッカー界にとってレガシーになる。 その一方で、改善すべき問題がたくさんあるのも事実だ。世界の列強国から見れば、インターナショナルマッチウィーク外でシーズン開幕前後に行なわれる五輪への優先度は低く、欧州のクラブから今以上の協力体制を引き出すのはハードルが高い。 今まであれば、U-23の最強スカッドを組み、OAという助っ人の力も借りてベストな布陣を模索してきたが、海を渡る日本人選手が増えてきた今、それは現実的なチーム作りではないだろう。ギリギリまでどうなるか分からないという前提条件を踏まえながら、大岩監督が施したように活動ごとのベストメンバーを探っていくのが最良。技術委員会などの強化側のバックアップに加え、過去に五輪に携わったコーチングスタッフの経験値も、チームビルディングに不可欠だ。 U-17ワールドカップやU-20ワールドカップを目ざす世代別代表は、コーチを務めた人物が次回大会で監督を担うケースが多い。来年のU-17ワールドカップを目ざすU-16代表を率いる廣山望監督も、長らく指揮官を務めてきた森山佳郎監督のもとで、自らの目で多くのことを学んできた。 もちろん、レガシーとして語り継ぐことも大事だが、現場を見てきた人間がチームに残れれば言うことはない。今後、2028年のロス五輪に向けた人事が本格化していくが、勝手知ったる大岩監督の続投や、羽田憲司コーチの残留も含めて、人材を引き継いでいく方策も五輪世代の強化として一考すべきだろう。 兎に角にも大岩ジャパンの戦いは終わった。スタッフや選手たちの涙も含め、結束力と一体感にあふれた好チームだったのは間違いない。この悔しさを受け入れつつも、次に向けてどのような一手を打っていくのか。 「オリンピック世代というのは、僕の個人的な見解として、今後ますますいろんな意味で難しくなる。そのなかで必ず選手ファーストでないといけないし、選手の成長が第一にないといけない。それが滞ってはいけないんです。我々の経験を少しでも活かしてほしいです」とは大岩監督の言葉。準々決勝敗退で終わりではない。次世代にバトンを渡すための戦いは、ここからが本当のスタートだ。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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