プレミアリーグの図抜けたMFウーデゴール 消えた天才少年はなぜ表舞台に帰ってこられたのか
【23歳でアーセナルのキャプテン】 ノルウェー代表の初キャップは最年少記録の15歳。左利きのテクニックと類まれなパスセンスは、注目の的だった。 ラストパスのうまさは同じ北欧出身のミカエル・ラウドルップを思わせるものがあり、それは現在でも変わらない。ボールが通る道筋を瞬間的に見つけ出し、最適のタイミングと球質を調整する能力が図抜けている。 こうした才能は10代ですでに表れているケースが多い。ウーデゴールのような10番タイプだけでなく、GKもDFもFWもそれぞれの特別な能力はすでに表れているものなのだ。ただ、それだけではプロにはなれても、プロのなかで成功を収められるとはかぎらない。 同世代では飛び抜けた存在だったウーデゴールでも、レアル・マドリードに行けば未熟な選手にすぎなかった。トッププロの選手たちは天才の集まりだからだ。自分の得意分野でひけをとらなくても、不得意分野で負け続ければポジションはとれない。 ウーデゴールに限らず、天才MFの落とし穴はたいてい守備である。同世代では問題なくても、トッププロとなれば恐ろしく速く、あるいは強く、うまい選手を相手にしなければならないわけで、そこで戦えない選手は確実に淘汰される。チームの穴になってしまう選手を起用することはできない。 つまり、才能はその選手がどのレベルまで行けるかの可能性を示しているが、実際にそこに到達できるかどうかは不得意な分野で決まるということ。例えばプレミアリーグで通用する攻撃の才能があるとすれば、問われるのはプレミアで少なくとも平均レベルの守備ができるかどうかだ。 アーセナルでのウーデゴールは、守備での貢献度も高い。素早くプレスし、戻って守備を助ける。抜群の運動量と、球際で戦う強さを示していて、モダンなプレーメーカーの代表格となっている。 ただ、その守備力を身に着けるのに約10年を必要とした。その間、諦めずに精進し続けた精神力は、並々ならぬものがあったに違いない。移籍したチームですぐに、23歳の若さでキャプテンを任されたのは、10代から発揮していた才能によるものではなく、10年間で磨かれてきたものがあったからではないかと思う。