【全ドライバー独自採点&ベスト5/F1第16戦】劣勢から勝利をつかみとったルクレール。期待以上の新人コラピント
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価し、ベスト5のドライバーを選出した。今回はイタリアGPの週末を振り返る。 【写真】2024年F1第16戦イタリアGP イタリアGPにスペシャルデザインヘルメットで臨んだ角田裕毅(RB) ─────────────────────────── モンツァにはコーナーは実質的に6つしかないが、ダウンフォースを最小限に抑えた状態で、3つの高速コーナーと3カ所のヘビーブレーキングエリアの組み合わせに挑むことは、ドライバーにとって非常に難しい仕事だ。レース中、限界を少し下回って走るぶんには、それなりの仕事をこなすのは比較的簡単だ。しかし、全開でプッシュしていると、ミスが起こりやすく、それが壊滅的な結果をもたらす可能性がある。 【2024年F1第16戦イタリアGP ベスト5ドライバー】 ■評価 10/10:スタートとタイヤ管理で予想外の勝利をつかんだルクレール シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選4番手/決勝1位 シャルル・ルクレール(フェラーリ)は日曜日にひとつもミスをすることなく、マクラーレン有利と思われたレースを制した。ポールポジション争いに加わった後、決勝では良いスタートを切り、ジョージ・ラッセルのミスの恩恵を受けてファーストシケインの後に3番手に浮上。その後、ロッジア・シケインでマクラーレン同士が争ったことによりもたらされたチャンスをつかんで、ランド・ノリスを追い越し、パパイア・オレンジの2台の間に割って入った。これがルクレールにとって、勝利への布石となった。 ハードタイヤに交換して最初の数周をうまくコントロールして走ったことで、2度目のピットストップなしに走り切ることを可能にした。それが、予想外の、しかし彼の仕事にふさわしい勝利をもたらす最後の要因となった。 ■評価 9/10:チームメイト相手のバトルを制したピアストリ オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選2番手/決勝2位 オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は、勝利を逃すことを全く予想していなかった。予選で再びノリスに敗れたものの、ピアストリは決勝オープニングラップのセカンドシケインで大胆かつ攻撃的な動きを見せて、ノリスを追い越し、リードを奪い、その過程でチームメイトは3番手に後退した。 マクラーレン2台はその後、ポジションを争うなかで、速いペースで走り続け、1ストップで走り切れるほどタイヤを持たせることができなかった。そうしてピアストリは2回目のピットストップを行って、ルクレールに敗れ、F1での2度目の勝利を逃した。しかしピアストリは今回、ノリスに対して再び強力なメッセージを送り、ホイール・トゥ・ホイールでの戦いでは最強のドライバーであることを示した。 ■評価 8/10:予選で活躍も、決勝で強さが足りなかったノリス ランド・ノリス(マクラーレン):予選1番手/決勝3位 ランド・ノリス(マクラーレン)にとって、このレースで敗北したことは、二重のマイナスをもたらした。まず、マックス・フェルスタッペンとのポイント差をさらに10ポイント縮める絶好の機会を逃した。さらに、ハードながらもフェアなバトルで、再びチームメイトに敗れた。ノリスのポールラップはこの週末のハイライトといえるものだったが、ピアストリとのバトルで、なんとしても前の位置を守るという決意が足りなかったことが、不本意なリザルトにつながった。 ■評価 8/10:予選でも決勝でも最高のパフォーマンスを見せたアルボン アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選9番手/決勝9位 ウイリアムズが好成績を期待していたトラックで、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、予選とレースの両方でミッドフィールドをリードし、週末のスターのひとりとなった。予選ではあらゆるリスクを取った上で、さらに一歩限界に踏み込んで、9番手を獲得。その走りは見ていてわくわくさせられた。 日曜日にはピットストップを遅めに行った後にフェルナンド・アロンソの後ろに落ちたが、1ストップで走ることで前に出た。ケビン・マグヌッセンにはかわされたものの、マグヌッセンがペナルティを受けた後、アルボンは大きく離されずに走ったことで、最終結果で逆転し、9位を獲得した。 ■評価 8/10:期待以上の仕事をしてみせたルーキー、コラピント フランコ・コラピント(ウイリアムズ):予選18番手/決勝12位 F1デビューのフランコ・コラピント(ウイリアムズ)は、モンツァが新人にとって難しいサーキットでないことを考慮しても、週末を通して素晴らしい仕事をしたと評価できる。予選でコラピントは、セカンド・レズモで体勢を崩す前までは、Q2進出がほぼ確実と思われた。 日曜日にはスピードと自信を見せて、クリーンかつ的確な動きで先輩ドライバーたちへのオーバーテイクを成功させた。ポイント争いには加わらなかったものの、期待を上回るパフォーマンスを見せ、ウイリアムズが彼の能力を信じて起用した決断が正しかったことを、早くも証明し始めている。 【ベスト6以下のドライバーとその戦い】 カルロス・サインツ(フェラーリ):予選5番手/決勝4位 =評価 7/10:予選でのルクレールとの差は小さいものだったが、決勝ではチームメイトほどタイヤをうまく管理することができなかった。 ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選6番手/決勝5位 =評価 7/10:予選Q3で小さなミスをふたつ犯し、それがなければポールポジションに挑戦できていたはずだと悔しがった。決勝ではグリッドよりひとつ上でフィニッシュ、マシンにそれ以上の結果を可能にする力がなかった。 マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選7番手/決勝6位 =評価 7/10:予選Q3でクリーンなラップを走れず、小さなミスで大きな代償を支払うことになった。レースでは状況を受け入れて走り、6位でフィニッシュした。 ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選3番手/決勝7位 =評価 7/10:予選で素晴らしい仕事をしたが、決勝ではターン1に向けて少し欲張りすぎて、後退することになり、4位を争う機会を逃した。その後、良い走りで巻き返したが7位にとどまった。 セルジオ・ペレス(レッドブル):予選8番手/決勝8位 =評価 6/10:予選ではフェルスタッペンをサポート。レースでは、最終スティントでミディアムタイヤを履いた後、パフォーマンスが大きく落ち込んだ。 フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選11番手/決勝11位 =評価 6/10:マシンのパフォーマンス不足により順位を下げ続けるなかで、自分にできる最大限の仕事をし、チームメイトをはるかに上回った。 ダニエル・リカルド(RB):予選12番手/決勝13位 =評価 6/10:レース序盤の接触によってポイント争いのチャンスを失った。しかし週末を通して、まずまずの速さを発揮していた。 エステバン・オコン(アルピーヌ):予選15番手/決勝14位 =評価 6/10:今回のマシンには戦える力がなかったが、僅差でチームメイトに勝った。 ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選14番手/決勝15位 =評価 6/10:予選で良いパフォーマンスを発揮。しかし決勝では誤ったタイヤ戦略で走らなければならなかった。 バルテリ・ボッタス(キック・ザウバー):予選19番手/決勝16位 =評価 6/10:予選では最終コーナーでイエローフラッグに遭遇するという不運に見舞われた。レースでは最大限の力を発揮して走った。 ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選10番手/決勝17位 =評価 6/10:予選の成績は素晴らしかったが、決勝ではスタートが良くなく、運悪くリカルドに接触されたことで、後方に沈んだ。 ケビン・マグヌッセン(ハース):予選13番手/決勝10位 =評価 5/10:レースで高い競争力を見せたものの、攻撃的なドライビングによりペナルティを受け、アルボンの後ろに降格された。さらに、次戦での出場停止処分が言い渡された。 角田裕毅(RB):予選16番手/決勝リタイア =評価 5/10:予選Q1でマグヌッセンが引き起こしたイエローフラッグの影響を受けた。レースでは序盤にヒュルケンベルグにヒットされて、その後、リタイア。モンツァでの不運が続いている。 周冠宇(キック・ザウバー):予選20番手/決勝18位 =評価 5/10:モンツァ用のフルパッケージを走らせていなかったこともあるが、常に最下位近くに位置していた。 ランス・ストロール(アストンマーティン):予選17番手/決勝19位 =評価 4/10:予選でも決勝でも、チームメイトから大きく離されていた。 [オートスポーツweb 2024年09月07日]