なぜザルツブルクから特別な若手選手が世界へ羽ばたくのか? ハーランドとのプレー比較が可能な育成環境とは
次世代の有望選手が育まれる環境とは
アカデミーオフィスの建物は2階と3階部分が寮になっているが、監督・コーチは基本的に上の階には行かないという。四六時中指導者と顔を合わせるのは、育成選手にとって負担でストレスになるからだ。寮長と教育係が常勤し、サポートをしている。 プライベート空間の大切さをクラブとして大事にしているので、建物内では空間が大きくとられ、材質に木が多く使われ、無機質感を可能な限りなくし、自然を感じられる設計。観葉植物もたくさん置かれている。多目的室内場ではサッカーだけではなく、バスケットボールやほかのスポーツなど自由に遊ぶこともできる。 育成とは何もかも計算通りに結果をもたらせるものではない。どんな選手がどんな成長を遂げるのかには不特定多数の要素がある。小さいころに優れた才能を見せていたからといって、それが必ずしも輝ける未来を保証してくれたりはしない。どれだけ周りが必死になっても、本人に熱い向上心とブレない芯がなければどこかでその歩みはゆがむ。 だからこそ、指導者や周りのスタッフは彼らが人として、選手として確かな成長へ導くための環境づくりとして、サッカーにおける自己分析の仕方、日常生活との向き合い方、うまくいかないときのメンタルコントロールなどの意識の持ち方などを学べるようにすることが大切なのだろう。 この日、見学させてもらったザルツブルクのU-21トレーニングはとても熱く、ボディコンタクトのたびに激しい音が響いてくるほど。ミニゲームでは誰もが本気で勝ちを目指して戦い、勝ったチームはまるで大事な試合で勝利したかのように喜んでいた。トレーニング後の選手には充実感がみなぎっているのを肌で感じることができた。こうした日々の中で、次世代の選手がまた育まれてくるのだ。 <了>
文=中野吉之伴