なぜザルツブルクから特別な若手選手が世界へ羽ばたくのか? ハーランドとのプレー比較が可能な育成環境とは
ハーランドや南野のプレーと比較が可能?
「選手はより素早く目と頭を働かせ、より早く情報を処理し、どのように視野を適切に確保するかをトレーニングしなければなりません」 ゲーム分析・イノベーションプロジェクト主任のアレクサンダー・シュマルホーファーがレッドブルのホームページでそんなコメントを残していた。こうしたトレーニングは選手が必要なテクニックを身につけているかの大事な指針にもなる。 宮沢はサッカーボット360の効果についてこのように語る。 「テクニックの数値化は難しいですが、認知すべきものが映し出されたところから、選手が状況を瞬時に把握して、どこから来るボールをどこでどのように受けてパスをするのかがここでは測られるということになるわけです。つまりボールを受ける前のポジショニングと体の向き、ボールをコントロールするスキル、スムーズにパスへと移行するスキルすべてを総じて一つのテクニックというところで解釈することができるわけです」 データはすべてストックされていく。そしてここにはかつてザルツブルクにいた選手のデータもすべてそろっている。ということは、だ。ハーランド、ソボスライ、そしてもちろん南野のものがそこにはある。 今の自分とそうしたトップレベルの選手との差を間近に感じることができるという点でも、選手にとって非常にありがたい物差しだといえるだろう。さらに実際のシーンを映像で再現してディスカッションできるようにまで進化しているという。こうして出てきたデータをピッチにおけるプレーと比較をすることで、相互性や適応性を考慮することにもつながる。宮沢は続ける。 「選手の中には感覚でプレーする選手がいて、彼らの感覚的な部分を戦術ボード上だけで解決、修正しようとするとうまくいかないこともあると思います」
練習頻度はどうだろう? ザルツブルクでは…
ザルツブルク育成アカデミーのトレーニングを観察すると、コートのサイズ感や人数バランス、最初の立ち位置、ボールの位置、ボールアウト時のルールなど、とにかく選手がムダな時間をなくして、選手のオンタイムプレー時間をどのように捻出するかにものすごく注力しているのが見てとれた。非常に丁寧にデザインされている。 見学したトレーニング最後のゲームでは「オンタイムプレー4分×2」というルールだった。ボールアウト時やGKがボールを持ってパスの出しどころを探している時間はカウントされない。実際にプレーしているオンタイムの時間でサッカーを考えている。ボールを拾いに行ったりする時間がないようにあらかじめ準備されているから、切り替えが早い。足も頭も心も止まらない。トレーニングはやったつもりになっては、身につくはずのものが身につかない。 練習頻度はどうだろう? ザルツブルクでは例えばU-14で週に4回、U-16以上で週に4回+午前に2コマのチームトレーニングが行われる。基本1回90分。毎回のように高いインテンシティでのトレーニングがプランされているので、それ以上のチームトレーニングは負荷にしかならないというのが根本にある考えだ。それに子どもたちはみんな学校もある。日常生活もあるのだ。それをないがしろにするわけにはいかない。サッカー漬けにしないことも大切なテーマだ。 個々の選手にあったアプローチを綿密に考えることはやはり欠かせない。チームトレーニングとは別に、個別トレーニングの時間をうまくとらなければならないのだから、コーチングスタッフによるスケジュールマネジメントが肝になるし、やりすぎにならないように、やらなすぎにならないように、その調整がとにかく大変だ。 「選手が一人の人間として成長し、パーソナリティを磨いていくためのサポートが必要だと思っています。そのあたりの配慮がオフィスの設計や空間の使い方に表れています」(宮沢)