人生最大のストレス「パートナーの死」と、どう向き合う?「絶対に忘れられない」心の傷を癒すために、一緒に寝ていたベッドを使い続けるべき理由
人生100年時代、現役世代を駆け抜けた後はどのように過ごせばいいのでしょうか。精神科医の保坂隆先生いわく、人生後期は無理をせず「ほどほど」をキーワードに過ごすことが大切とのこと。『精神科医が教える 人生を楽しむ ほどほど老後術』より、日常生活を元気で楽しく暮らすための知識をご紹介します。 * * * * * * * ◆「別れのストレス」 ストレスにもいろいろな要因があります。人生のさまざまな場面におけるストレスを数値化した研究では、「配偶者の死」は最高レベルの100、離、離婚が73、別居でも65 と、パートナーを失ったときのストレスが非常に強いとわかりました。 では、「別れのストレス」を軽くするためにはどうすればいいのでしょうか。「忘れよう」と努力する人がいますが、じつは逆効果です。 なぜなら、感情というのは、それに注意を向ければ向けるほど強くなるからです。これを「感情の法則」といいます。 たとえば、こんな実験があります。被験者にシロクマが登場する映画を見せたあと、「シロクマのことは忘れてください」と依頼します。 ところが、その後、調べてみると、シロクマのことを覚えている人の割合が多くなっていたのです。
◆いつもの暮らしの中で薄れる記憶 「感情の法則」にはもう一つ、「感情を自然のままにしておけば、ピークに達したあと、自然に下がり、やがて収まる」という性質があります。 つまり、何も考えず、ふだんどおりの暮らしをすること、いままでと変わらない日々の過ごし方をすれば、強いストレスとなっていた記憶もしだいに薄れていくということです。 食事を共にする人がいなくなったからといって、コンビニ弁当ですませるというのは逆効果で、これまでどおりにスーパーで食材を買い、料理をつくり、テーブルに並べ、一人で食べることが精神的にはいいのです。
◆パートナーや大切な人を失ったとき パートナーと一緒に寝ていたベッドを使いたくないという気持ちもわかります。 しかし、それは「忘れよう」「忘れたい」という思いの裏返しで、かえってストレスを大きくさせるだけ。これまでどおりのライフスタイルを続けるほうがいいでしょう。 いつも2人で見ていたテレビ番組が始まる時刻になったらチャンネルを合わせたり、それまでと同じように新聞や雑誌を読んだり、音楽を聴いたりすることが大切。 これまでどおりに数週間を過ごすうちに、「絶対に忘れられない」「消えることのない悲しみ」と思っていた深い心の傷が、しだいに癒されていくのです。
保坂隆