認知症、墓じまい、保険の見直し…人生の後半戦で必要な「終活」で注意すべきこと
文/鈴木拓也 「終活」が流行語大賞を受賞して10年あまり。今やすっかりなじみのある言葉となった。 その語感から、遺産のことなどを最晩年に決めるという印象がある。しかし、専門家によれば、それよりもずっと早く、50代あたりからスタートするのが望ましいという。 くわえて、当事者だけでなく子どもも、親の終活をサポートする必要が出てくる。例えば、親が認知症を患った場合、介護はもちろんのこと、資産や保険の扱いはどうすべきか? そうした課題が、子どもにも降りかかってくるのである。 そうした、終活にまつわるさまざまな事柄を1冊にまとめたのが、先般刊行された『相続・遺言・介護の悩み解決 終活大全』(福村雄一編著/Gakken)だ。 その一部を、今回は紹介しよう。
認知症になったら金銭管理はどうするのか?
「認知症になって銀行口座が凍結」というトピックの記事を時折目にする。 本当に凍結されて、お金を引き出せなくなるのだろうか? 本書によれば、認知症の症状に応じて、支障ないこともあるし、やはり引き出せなくなることもあるという。 そもそも、認知症と診断されたからといって、そのことを金融機関に申告する義務はない。症状が軽く、ATMの操作や窓口での受け答えに問題がなければ、引き出しは行える。 これが、日常的に受け答えが難しい段階になり、金融機関の担当者が、判断能力がないと見てしまうと、口座自体をロックすることはあるという。こうなってしまうと、本人でもお金の引き出しが困難になる。 ただし現状、認知症が進んだ患者の多くは、家族にキャッシュカードを持たせ、お金の管理をしてもらっている点を、著者は指摘する。 しかし、これは別の問題をはらむ可能性もある。 例えば、子ども同士が不仲で、親と仲のよい1人がキャッシュカードを預かっている場合。親が亡くなって相続の手続きをする際、キャッシュカードを持ってない方が、「本当はこれくらいお金が残っているはず」などと主張するトラブルが起こるかもしれない。 また、それ以前に、自身がおひとり様で、安心してキャッシュカードを預けられる人がいないこともあるだろう。 これに対し、有効な方法として取り上げているのが、成年後見制度だ。これは、成年後見人が、本人に代わってお金の管理や事務手続きを代行してくれるという制度。成年後見人は、家庭裁判所が選任した人がなり、たいがいは司法書士といった専門家となる。有償であるが、成年後見人が責任をもって、金銭管理や諸手続きを代行してくれる。 他にも、任意後見や家族信託といった制度もあり、終活にあたってぜひとも検討しておきたい項目の1つとなっている。