千葉・幕張メッセで「ブラタモリ」!? なぜ地球科学の学術大会のテーマになった?
なぜ学術大会で「ブラタモリ」なのか
それにしても、なぜ、JpGUという地球科学の一大イベントのセッションに、「ブラタモリ」がとりあげられることになったのだろうか? その大きな理由に「アウトリーチのヒントを探りたい」という専門家の思いがあるだろう。 「アウトリーチ」とは、文部科学省のホームページなどによると、専門家の研究活動などへの国民の興味・関心を高めたり、国民のニーズを研究者が共有するために、研究者自身が行うコミュニケーション活動のこと。つまり、専門家が、専門家以外の人々に対し、研究の内容や社会的意義を説明したり、反対に専門家以外の人々が専門家に対してどのようなことを望んでいるのかを知るために普段から交流していく活動といえるだろう。 しかし、専門家にとって、普段の研究について分かりやすく説明することは簡単なことではない。興味、関心を持った人であれば、公開のシンポジウムや成果発表会などに足を運ぶこともあるだろうが、広く一般に知ってもらうとなると、そのきっかけもなかなか見つけられない。また、専門的なことを正しく説明しようとすると、どうしても難解になりがちだし、反対に簡潔に説明しようとすると正確さが犠牲になったりする。 「ブラタモリ」はこのような専門家の悩みに対する一つの答えとなっているようだ。 セッションのコンビーナ(企画・発案の役割)の一人で、「箱根」を取り上げた回に専門家として出演した神奈川県温泉地学研究所の萬年一剛・主任研究員は、ホームページで公開されているセッションの予稿集の中で、「研究者が納税者である市民に向き合い、自分の研究を説明するアウトリーチの機会が増えている。そのような研究者にとって、ブラタモリの制作過程からは、伝えられそうな内容をたくさん集める『取材力』、素材を精選し地域の本質を捉える『洞察力』、伝えるべき内容を載せるストーリーを作る『構成力』、ナレーションやアニメーションを用いた『表現力』(中略)など、必要な「力」とそのあり方を学ぶことができる」と趣旨説明を記している。