電車内の携帯電話規制緩和で再注目、改めて学ぶ心臓ペースメーカーの実態
東日本の鉄道各社が10月から、車内の優先席付近で携帯電話の利用を規制するルールの緩和を開始しました。これまでは心臓ペースメーカーを装着している乗客に影響を与えないようにという理由で、優先席付近では携帯電話の電源を切るよう促していたのですが、これからは混雑時を除いて電源オフを求めないことになります。この背景には、「携帯電話が心臓ペースメーカーに影響を与える可能性は非常に低い」とする総務省が8月末に出した指針に基づくものですが、実はこの心臓ペースメーカーについて、私たちはあまり多くのことを知りません。そこで今回は、心臓ペースメーカーはどういうものか、装着している人は日常でどのようなことを気にしているのかなどについてレポートします。
ペースメーカーはどのような人が装着するの?
ペースメーカーは、読んで字の如く心臓が拍動するリズム(ペース)を整える役割を果たし、主に「不整脈」という心臓疾患を持っている人が装着しています。心臓は、血液を体内に届けるポンプの役割を果たしており、微弱な電気信号によって一定のリズム(1分間に60~70回程)で収縮を繰り返しながら1日約8トンの血液を体内に届けていますが、このリズムに異常が生じるのが「不整脈」。中でも、主に心臓の拍動が極端に遅くなる「徐脈性不整脈」という症状を持つ患者さんが、ペースメーカーを必要としています。 徐脈性不整脈の患者さんは、突発的に心臓の拍動が異常に遅くなったり、場合によっては一時的に止まってしまったりして、血液を体内に届けることができなくなってしまいます。それをペースメーカーで補助しなければ、血液を通じて酸素が脳や手足に届けることができなくなり、めまいや動悸、呼吸困難、失神に至る恐れがあるのです。ペースメーカーは、慢性的な不整脈の患者さんにとって、心臓の正常な動きを維持するための有効な治療方法として確立しているのです。
ペースメーカーは体内で何をしているの?
ペースメーカーの本体は薄く小さいチタン製の機器で、中には電子回路と電池が入っています。その本体を外科手術によって左胸上部の体内に装着(植え込み)され、体内に植え込まれたペースメーカー本体には「ペーシングリード」と呼ばれるケーブルがついており、それが心臓まで届いているのです。このペースメーカーは、ペーシングリードを通じて常時心臓の拍動をモニタリングしており、もしもこの拍動リズムが途切れると、ペースメーカーはそれを感知して電気的な刺激を心臓に与え、心臓の拍動リズムを一定に保つことができるようになります。