「核融合」需要にも期待…三井住友信託など5社が国内で重水リサイクル、価格10分の1に
三井住友信託銀行、アサヒプリテック(東京都千代田区)、ジャパンウェイスト(神戸市東灘区)、英和など5社は、産業用途で需要拡大が見込まれる重水素の原料となる重水のリサイクルに乗り出す。産業廃棄物として処分されている使用済みの重水を回収し、再利用する技術を確立した。海外から重水を輸入して調達するのに比べて、価格を10分の1程度に低減できる。重水を安価に提供し、国内で重水素の安定供給を実現する。 30秒で分かる「核融合」 重水素は水素に中性子が一つ加わった同位体で、地球上の全水素の0・015%存在し、重水として海水などの自然水にある。重水・重水素は人体に害がなく、有機EL材料の発光効率や耐久性の向上、医薬品の効能の持続性向上や副作用の低減などの目的で利用されている。次世代エネルギー源である核融合の燃料用途としても需要拡大が期待される。 重水素は重水の電気分解により合成される。現状は国内で利用される重水のほとんどを海外から輸入しているが、希少性が高く、価格変動が激しい。三井住友信託銀など5社は重水を国内で安価かつ安定的に供給するため、リサイクルを開始する。 研究所の試験などで使用した廃重水を回収し、専用の水電解装置で再利用できる重水に戻す。電力はアサヒプリテックの廃棄物発電所の発電設備を活用する。電力系統に接続できずに捨てている電力を用いるため、安価な製造が可能になる。 リサイクル事業が本格化した段階で、5社共同出資の新会社を立ち上げることも検討する。2030年以降は重水の製造にも乗り出したい考えだ。核融合燃料需要などの新たな市場を獲得する。 三井住友信託銀は今回の共同事業で市場調査や重水製造プロセスの設計支援を行った。水素、蓄電池、電力、有機・無機化学などさまざまな分野の研究者や専門家で構成するチームが主導している。今後はプロジェクトに融資するなどして資金需要に応える。 アサヒプリテックは重水需要を開拓するための技術営業を担い、ジャパンウェイストは重水リサイクルに必要な電力を廃棄物発電により供給する。英和は既存顧客との連携強化や新規需要開拓に取り組む。