〈暗殺未遂後、トランプの勢いは完全ストップ?〉シミュレーション「ハリス対トランプ」2重、3重の「ガラスの天井」
ハリスの「フリーダム効果」
バイデン大統領が選挙戦からの撤退表明を自身のX(旧ツイッター)で表明してから1週間が経過したが、ハリス副大統領の「フリーダム効果」が徐々に出始めている。 トランプ前大統領は7月28日(日本時間)、中西部ミネソタ州で集会を開き、いつものように演説の最後に「米国を再び偉大にする(Make America Great Again)」と主張して集会を終えたのだが、異なった点が1点あった。ここに筆者は注目した。このセリフの前に「米国を再び自由にする(Make America Free Again)」とアピールしたのだ。 なぜトランプ前大統領は「自由」を出したのか。その狙いは一体何か。 一言で言えば、トランプ前大統領が、ハリス副大統領の「フリーダム効果」をかなり警戒している証拠だ。今後、ハリス副大統領が「フリーダム」のメッセージを核にして、選挙戦を戦うことは明らかだ。そこで、自分も「フリーダム」という言葉を使用して、その効果を相殺しようという狙いがある。 このトランプ前大統領の相殺戦略については、過去に何回か述べてきたが、これはトランプ氏のダメージを回避する常套手段である。裏返せば、トランプ氏にとってダメージになっているのである。
「重罪犯」「詐欺師」「性的暴行者」の3点セット
ハリス副大統領は、トランプ前大統領を「自由の抑圧者」のイメージの植え付けをやりたいのだが、それよりもすでに暴かれた事実に基づいた攻撃がある。 トランプ前大統領は、ニューヨーク地裁における元不倫相手への口止め料を巡る裁判で、12人の陪審員が全員34の罪に有罪の評決を下すことによって、「既決重罪犯(convicted felon)」になった。 バイデン大統領が7月21日(現地時間)、選挙戦からの撤退を自身のXで発表すると、翌22日民主党のベテラン下院議員のジェリー・コノリー氏(南部バージニア州)は、支持者にメールを送り、ハリス副大統領の下で同党がまとまることが重要であると強調し、ハリス氏支持を逸早く表明した。さらに、コノリー議員は、同じメールでハリス氏とトランプ氏が対戦すれば、「検事対重罪犯」のコントラストが鮮明になると指摘した。 元検事のハリス副大統領は、トランプ前大統領の重罪犯のみならず、トランプ大学におけるオンライン講座の授業料詐欺や、元女性作家に対する性的暴行で賠償金を命ぜられた件など、過去の事件を掘り起こして追及していく構えだ。 つまり、ハリス副大統領は残り98日間の選挙戦で、トランプ前大統領を「重罪犯」「詐欺師」および「性的暴行者」として描く戦略に出る。 このハリス副大統領の選挙戦略に関して、トランプ支持者は憤慨し、結束を固めるかもしれないが、この戦略は民主党支持者や民主党寄りの無党派層および鍵を握る郊外に住む女性に、バイデン大統領が与えることができなかった留飲を下げる効果がある。 さらに、トランプ前大統領を「重罪犯」「詐欺師」および「性的暴行者」に描くことに成功すれば、今回の共和党全国大会に参加しなかったマイク・ペンス前副大統領、ジョージ・W・ブッシュ元大統領、ディック・チェイニー元副大統領並びに2012年米大統領選挙における共和党大統領候補であったミット・ロムニー上院議員(西部ユタ州)等、共和党穏健派の票を得られるかもしれない。