〈暗殺未遂後、トランプの勢いは完全ストップ?〉シミュレーション「ハリス対トランプ」2重、3重の「ガラスの天井」
「ダブル検事」は実現するのか?
米NBCニュースは、ハリス氏の副大統領候補が2名に絞られたと報じた(日本時間7月30日)。ジョシュ・シャピロ知事(51歳 東部ペンシルべニア州)とマーク・ケリー上院議員(60歳 西部アリゾナ州)である。ハリス副大統領が非白人女性なので、バランスをとるために彼女の副大統領候補は白人男性が有力である。 そして、いずれも今回の激戦州において選挙を勝ち抜いた。つまり、一定の票を持っているのである。 2人の候補には、以下のメリットが存在する。まず、シャピロ氏が知事を務めるペンシルベニア州(選挙人19 以下同様)は、激戦7州の中で最重点州であり、ハリス副大統領が絶対に落とせない州である。このことは、バイデン大統領にとっても同様であったが、ペンシルベニア州スクラントン出身のバイデン氏の場合は、地元という強みがあった。 今回、ハリス副大統領には、トランプ前大統領の岩盤支持層は別として、票を取り戻さなければならない対象の有権者がいる。その一部は、イスラエル-ガザ戦争におけるバイデン大統領のイスラエル偏向に対する不満や怒りで離れていった若者やアラブ系である。 この戦争において、パレスチナ人の死者数が急増したころ、ハリス副大統領は、ホワイトハウスの会議においてバイデン大統領があまりにもイスラエル寄りなので、困惑したと報じられた。現在では、元検事であり人権重視のハリス氏は、バイデン大統領よりもガザの人々に対して同情的であると一般的に理解されている。その点では、離反した若者やアラブ系の人々を民主党側に引き戻す可能性がある。 一方、シャピロ知事はユダヤ系であるので、ハリス副大統領がパレスチナ寄りの発言をしても、ユダヤ系の票を失わないだろう。ちなみに、ハリス副大統領の夫でセカンド・ジェントルマンのダグラス・エムホフ氏もユダヤ系である。 さらに、トランプ前大統領がハリス副大統領に「極左」というレッテルを貼っているので、中道のシャピロ知事はそのイメージを弱める。 海軍出身で元宇宙飛行士でもあるケリー上院議員を副大統領候補に選べば、西部アリゾナ州(11)とネバダ州(6)での勝利が期待できるかもしれない。ケリー氏の妻ガブリエル・ギフォーズ元下院議員は、2011年アリゾナ州ツーソンで至近距離から頭部を銃撃されたが、一命を取り留めた。ハリス副大統領は、ケリー氏と組めば、「銃の暴力からの自由」を前面に訴えることができる。 2人の他にロイ・クーパー知事(67歳 南部ノースカロライナ州)の名前が挙がっていたが、彼は自身のXで、ハリス氏の副大統領候補にならないと投稿した。 クーパー知事が民主党副大統領候補に指名された場合、ノースカロライナの州法により、副知事のマーク・ロビンソン氏が知事になる。ロビンソン氏は共和党であり、ノースカロライナ州におけるハリス副大統領の勝利を阻止する選挙運動に出る可能性が高い。この点について、ホルダー氏のチーム内で議論になったのだろう。また、クーパー知事はシャピロ知事とケリー上院議員と比べて知名度が低い。 ところで、シャピロ知事はハリス副大統領と同様、元検事である。シャピロ氏が、ハリス氏の副大統領候補になれば、「ダブル検事」でトランプ前大統領の重罪や過去の詐欺および、性的暴行事件を厳しく追及することになるだろう。