【DeNA】スポニチ独自、日本一秘話連載第4回 佐野の打席「ルーティーン」5年続いた意識に記者も猛省
DeNAが98年以来26年ぶりの「日本一」を達成。3位から頂点に昇りつめた「成り上がり」のシーズンを、スポーツニッポン担当記者は1年を通し見届けた。その舞台裏にはシーズン中に明かせなかった多くの秘話がある。ここでは、独自取材の秘話を5回連載で紹介する。第4回は、侍ジャパンに初選出された佐野恵太外野手(29)の取り組み。打席での「ルーティン」秘話。(構成、スポニチDeNA担当・大木 穂高) 佐野が打席に入るとき、お決まりの「ルーティン」がある。ゆっくり打席に向かい、右翼線に続くファウルラインをバッターボックスのラインに見立て、素振り。これは多くの選手に見られる「準備運動」だ。 注目はこのあと。一度、自身のバッターボックスの立ち位置、最も打席の捕手側に移動する。そしてそこから、必ず投手側のラインにゆっくり歩いて向かう。じっと投手を見つめ静止。ときにはイチロー選手のようにバットを立てる。その後、再び定位置に戻る。 「5年も前からやっていますよ」。記者は佐野にそう言われ猛省した。全試合全打席で取り組んでいる。動作に気づきながら、質問してこなかった自身の手抜きに脱力した。 理由はこうだ。佐野は言う。「自分は打席に立つと、投手までの距離が近く感じる。だから一度必ず、出来る限り投手に近づいてから自分の立ち位置に戻る。すると、投手までの距離が離れて“遠く”なったように感じる。つまり、錯覚を起こす作業です」。 投手盤から本塁までの距離は、18・44メートル。だが打者によっては投手までの距離は、シーズン中に生じる心理的変化の影響で異なって見えてくる。佐野は投手が近く見えてしまう。投手もマウンドに立つと、その日のメンタルで捕手までの距離が遠く見えたり近く見えたりするという。 143試合+ポストシーズン。毎試合球速150キロ近くで投げ込まれる白球に立ち向かう。集中力の持続が必要だ。その勝負を「有利」に持ち込むため、多くの打者が打席で「ルーティン」をこなしている。 佐野は一連の作業で、距離をつくり自身に落ち着きを与える。ゆとりをもって投球を呼び込む錯覚を起こす。20年に首位打者、22年に最多安打の「安打製造機」は、今季は139試合、打率・273。26年ぶり日本一の主軸となった背番号7の取り組みは興味深い。 初の侍ジャパンでの戦い。国際試合でも佐野は「ルーティン」を継続するはず。記者が恥ずかしくも今年事実を知ったそのスタイルで、海外の難敵を打ち崩すことに期待する。(第4回終了)