<独占インタビュー>京大初のプロ、田中の考えるプロ成功計画
京大初のプロ野球選手が、いよいよ明日、誕生する。千葉ロッテは2日、神戸市内でドラフト2位指名した田中英祐投手(22)と契約交渉を行う。それに先だちTHEPAGEでは田中投手を独占インタビュー。京大頭脳が考えるプロでの成功計画を聞いた。
ひと昔前は、構内の食堂を「学食」なんて呼んだものだが、京大の吉田キャンパス、時計台の前にある洒落たカフェテラスに、その言葉は似合わなかった。大正14年に作られ90年近い歴史を持つ時計台は、西の雄、京大の持つ歴史の象徴だが、どこかミスマッチのカフェテリアでジャージ姿の田中とアイスコースを啜った。現在、卒論作成の佳境である 工学部に所属している田中の卒論テーマは、「SFA(表面力測定装置)における水和構造の逆計算理論」という難解なもの。研究室に7時間以上も、こもることもあって殺到する取材も「月に2度」の制限をしているほどだ。それでも、夜や土日など時間をみつけては、自主トレを続けている。この日も、取材の合間の時間を見逃さずに練習をしていた。そのトレーニング内容が、また頭脳派の京大生らしい。 千葉ロッテは、公式WEBサイトに秋季キャンプのメニューと練習のダイジェスト映像を流している。例えば「800m、400mを、それぞれ5本。その後、400mを1分15秒以内で」などと細かい強化ランニングメニュー、トレーニングメニューが掲載されているが、田中は、それをチェックして、できる限り忠実に京都で再現しているのだ。 「まったく同じメニューを消化するのは、時間的に厳しいんですが、できる限り同じことをやっています。なんとかやれているという感じで、秋季キャンプは、練習量は多いと聞いていますが、プロは、やはり練習から大変やなとは思います」 加えて現在、田中が時間を惜しんで取り組んでいる練習がある。京大近くにあるジムで行っている初動負荷トレーニング。目的は股関節の強化と可動域を広げることだ。 「僕は股関節の使い方が下手なんです。今、股関節を使う動きを身につけています。これが、うまくいけば、もっと力を抜いてピッチングができてコントロールもつく。3年のとき社会人野球の練習に参加させてもらい、股関節の使い方のアドバイスをもらいました。でも、当時は、試合で結果を出さねばならないという状況もあって、そればかりに取り組めずに1年で修正しきれなかった。今は、重点的にそれをやっています」 初動負荷トレーニングはイチローや、49歳で今なお現役の中日の山本昌が取り入れている筋肉に柔軟性をつける特殊な筋トレ方法。それを使って股関節を鍛え、柔軟性を持たせることで、重心が下がり、下半身に安定感と粘りが生まれる。ドラフト前にスカウトの多くが、「上体は強いが下半身がまだ使えていない」と指摘していたが、すでに本人が自らの課題を把握していた。 そして「契約もしていないのに、もう正念場を迎えています」と笑う。 ――というと? 「プロでは、ストライクゾーンの縁の枠に投げないと通用しない。それができるかどうかが生命線だと思うんです。そこに安定して投げるのが目標だし、そのために股関節のトレーニングに取り組んでいるんです。コントロールの精度が上がれば、ベンチの信頼感も打者への恐怖感も変わっています。それができるか、できないかが、プロでの生き残りの鍵です」