横領/不正による企業の損失は世界で4兆7,000億ドル以上 不正検知に特化したAIソリューションDatricksへの期待
AIによる不正検知、Datricksのテクノロジー詳細
Datricksの技術が注目を集める理由は、その革新的なアプローチにある。同社が開発した「リスクマイニング」と呼ばれる手法は、SAP、オラクル、セールスフォースなどのビジネスシステム全体で財務ワークフローを自律的に分析する。 Datricks Financial Integrity Platformの核となる3つのコンポーネントを詳しく見てみたい。 1つ目は「自律的プロセス発見」だ。これは、人間の手を介さずに組織の財務プロセスを継続的かつ自律的に分析する機能。具体的には、プロセスの実際の動きを追跡し、リアルタイムでモニタリングして学習し、問題を特定。そして異常がどこにあるのか、その根本原因を突き止めることができるという。 2つ目は「完全性露出検出」。DatricksのAIは、すべてのビジネス取引における問題や異常を、それらが発生する際の財務プロセスの文脈の中で分析する。これにより、重大な問題(不正、コンプライアンスギャップ、人的エラーなど)を、大きな財務的・評判的被害が生じる前に浮き彫りにすることができる。たとえば、通常と異なる高額の支払いが承認されようとしている場合、システムはその取引の背景(誰が承認したか、過去の類似取引はあるかなど)を分析し、不自然な点があればすぐにフラグを立てることができる。 3つ目は「完全性インテリジェンス」。このプラットフォームを使用する財務リーダーは、組織の財務健全性を包括的に把握できるダッシュボードにアクセスできる。Datricksのダッシュボードを通じて、最も重要な問題を可視化し、迅速な対応と財務パフォーマンスの最適化を実現することが可能となる。 設定不要で導入できる点もDatricksの強みとなる。組織の財務システムに接続してから1週間以内にリスクの特定を開始できるというのだ。これにはAIが大きな役割を果たしている。通常では、多くのコンサルタントと時間を要する作業が発生するが、AI活用により、その作業時間を1週間に短縮できる。 ローゼンブルムCTOはSiliconANGLEのインタビューで、Datricksの技術であれば、メタとナイキで発生した数百万ドル規模の不正も容易に発見できたと豪語している。同CTOは「理想的には、調達プロセスの各ステップは異なる人物が処理すべきだが、常にそうとは限らない」と指摘。Datricksは組織ごとの調達プロセス全体を学習し、新規注文や購入のフローを監視できるため、不審な行動をすぐにフラグ付けできるという。 Datricksの革新的な技術は、既に多くの大手企業から支持を得ている。Element Solutions、HELLA FORVIA、Teva、CyberArk、ICL Groupなどの大手企業が同社のソリューションを採用。さらに、デロイト、EY、KPMG、PwCなどの大手コンサルティング会社とのパートナーシップも構築している。
文:細谷元(Livit)