横領/不正による企業の損失は世界で4兆7,000億ドル以上 不正検知に特化したAIソリューションDatricksへの期待
AIによる不正検知ソリューション、注目株のDatricksとは
不正行為の検知が困難を極める中、AIを活用した不正検知技術に注目が集まっている。この分野で頭角を現しているのが、イスラエル・テルアビブを拠点とするスタートアップ、Datricksだ。 Datricksは、AI駆動型の財務健全性・コンプライアンスソフトウェアを開発する企業として、2019年に設立された。CEOのハイム・ハルパーン氏とCTOのロイ・ローゼンブルム氏が前身のコンサルティング事業から派生する形で立ち上げたこの企業は、「リスクマイニング」と呼ばれるAI駆動のアプローチを強みとしている。 同社が開発したDatricks Financial Integrity Platformは、財務の異常、不正パターン、コンプライアンス問題を発見し、企業にリアルタイムの洞察を提供する。このプラットフォームは、自律的プロセス発見、完全性露出検出、完全性インテリジェンスの3つの主要コンポーネントで構成されている。 Datricksの技術力と将来性は投資家からも高く評価されており、最近ではベンチャーキャピタルTeam8が主導するシリーズAラウンドで1,500万ドルの資金調達に成功。このラウンドには、グローバル企業向けソフトウェア大手のSAPや、既存投資家のJerusalem Venture Partners(JVP)も参加した。 Datricksのアプローチが注目を集める背景には、従来の監査プロセスの限界がある。冒頭でも触れたように、不正行為により企業が被る被害は総収益の30%以上を超える可能性もある。また、The Association of Certified Fraud Examiners(公認不正検査士協会)の調査では、不正行為による企業の損失は世界全体で4兆7,000億ドル以上に達すると推計されている。 同社のソリューションで特筆すべきは、企業の財務データの100%を継続的にリアルタイムでモニタリングすることで、より高い精度と少ない誤検知を実現している点だ。また、複数の大規模言語モデル(LLM)とマルチモーダルAIモデルを活用し、Amazon Bedrockを利用して顧客が好むLLMを柔軟に組み込むことができる点も注目に値する。 Datricksの技術は既に、具体的な成果をもたらしている。ローゼンブルムCTOはVentureBeatによるインタビューで、「同一人物が請求書を作成し、支払いも承認するという、コンプライアンスに準拠しない方法で200万ドルの支払いが行われていた事例を発見した」と語る。また、二重請求やその他の重大なミスを防止する能力も企業にとって重要な価値となっている。