大阪都構想の否決は高齢者のせい? 選挙における世代間対立をどうみるか
選挙結果に高齢者の意思が過度に影響しているのか
それでも今回、人々が「シルバーデモクラシー」と言いたくなるのは、投票の内容と年齢が強く関連しているからだ。大阪市の各区(24区もある)を、70歳代以上の人口の比率の順に6区ずつ4グループに分け、各グループで「賛成」と「反対」の差をとってみた。すると、高齢者が最も少ない(すなわち、相対的に若者が多い)第一グループでは、都構想賛成派が8.6%リード、次に少ない第二グループでは2.0%のリードなのに対し、高齢者がやや多い第3グループでは、反対派が4.2%リードと逆転し、最多の第4グループでは、さらに8.4%まで差が拡大する。高齢者が多い区ほど、反対が多いのだ。若い人の意思を高齢者が押し潰したという批判になる訳である。 どう評価すればいいのか。高齢者にも当然、大阪市の将来に意見を言う権利はあるので、選挙の結果は、結果として受け入れるのが民主主義だという意見もあるだろう。今回、特に評価が難しいのは、住民投票が都構想に「賛成」か「反対」かという二者択一だったからだ。これは小選挙区制にもいえることだが、一つの選択肢を選ぶという選挙では、勝者が総取りし、敗者が全くの死票となる。敗者は絶望し、今後、選挙に、あるいは大阪市政に背を向けるかもしれない。 そうならないこと、そうしないことを両陣営に望みたい。過去にも1950年代や1970年代には選挙における世代間対立が見られ、いつも若者側は抑圧されてきた。それは時に暴力や強烈な政治不信を生み出す。今回は、敗者を抑えつけるには、あまりに僅差で、あまりに大きな意思表示であった。世代間の潜在的な利益対立は避けて通れない。勝者も敗者も共に社会を構成する以上は、「総取り」や「切り捨て」に終らない、粘り強い議論を続けていく必要があろう。 --------------------- 品田裕(しなだゆたか) 1963年、京都市生まれ。1987年、京都大学法学部卒業。2000年、 神戸大学大学院法学研究科教授。専攻は選挙研究。「2005年総選挙を説明する-政党支持類型から見た小泉選挙戦略」(『レヴァイアサン』39号)、「衆議院選挙区の都道府県間の配分について-最高裁の違憲判決を受けて代替案を考える-」(政策科学19巻3号)など。