大阪都構想の否決は高齢者のせい? 選挙における世代間対立をどうみるか
有権者の中に特に高齢者が多いのか
有権者の中に特に高齢者が多いのか。今回の大阪市を考えてみると、70歳代以上は、人口の約17.6%(昨年9月末の住民基本台帳人口)で、日本全体、あるいはほかの地域と比べ特に多い訳ではない(むしろ少ないぐらいだ)。この比率が最近、急上昇したということもない。他の国と比べればわからないが、日本国内においては、この意味の「シルバーデモクラシー」は存在しない。ただ、10歳刻みで各年齢層の人口を見たときに、70歳台以上が他の世代より目立って多いのは事実だ。しかし、仮にそうだとしても、ただ人口が多いからと言って、高齢者層をバッシングするのは変だ。問題は、別の点にある。
投票者の中に特に高齢者が多いのか
実は、政治学者で熊本県知事も務める蒲島郁夫が1988年の研究で明らかにしたように、古今東西、いつの時代も、どこの場所でも、どんな選挙でも、強制がない限り、若者の投票率は常に低い。選挙権を得た時の投票率が最も低く、加齢とともに投票に行く人が増え、60歳代で最多となり、やがてゆっくり減少していく。そうすると、投票者の中の構成比は、年長者の側に傾く。いきおい、政治家の目は高齢者の方に行く。頼りになるのはそちらだからだ。しかし、これでは若者は損をしているのではないか、という懸念が「シルバーデモクラシー」と表現される。 日本は1990年代に衆議院総選挙などで投票率の低下を経験した。その時、中高年層では低下の幅も相対的に小さく、その後2000年代を通じて、ある程度、戻った。しかし、若年層の投票率は激しく低下したままで、回復も思わしくない。以前より、年代ごとの投票率の差は拡大しており、この意味の「シルバーデモクラシー」が体感されやすくなっている。 しかし、若者は常に投票に行かない訳ではない。2005年や2009年の総選挙では、若者など普段あまり投票しない層の参加で投票率が大きく押し上げられた。橋下市長が誕生した11年の大阪市長選挙もそのはずである。選挙が面白ければ若者は来るのだ。そして、今回の住民投票も高投票率だったことを考えると、いつもよりは、むしろ「シルバーデモクラシー」の度合いは、少なかったと考えられる。