なぜ石破政権は大苦戦しているのか…自民党が総裁選で絶対にやるべきだった「禊の済ませ方」
■「政治とカネ」問題への国民の怒りは根深い 【安田】さて、本題に入りましょう。今、世の中は自民党の総裁選の話題で持ちきりです(編註:対談収録は8月15日)。岸田さんが「政治とカネ」の問題の責任を取って不出馬を決断したと言ったように、「自民党が変われるか」が大きな焦点になっています。そもそも総裁選というのは現職が有利で、過去の事例では大平正芳以外は基本的に現職が勝っています。今回はその岸田さんという本来の「大本命」がいなくなったので、40代の小泉進次郎さんやコバホークこと小林鷹之さんといった若手、官房長官の林芳正さんや河野太郎さん、石破茂さん、高市早苗さんといった名前が取り沙汰される大乱戦になりました。この記事が出るころには総裁選の結果は出ているはずですが、西田さんはどのように見ていますか。 【西田】次の新総裁が誰になったとしても、国民置き去りなら年内に行われるだろう総選挙と来年の参議院選挙で、自民党が「自民党の論理」をゴリ押しするならシビアな状況に立たされるかもしれません。 【安田】もし新総裁のもとで行われる二つの選挙が、自民党の惨敗というような結果になると――。 【西田】当然、新総裁は権力の基盤を握れませんし、今回は特に政権交代がぐっと近づくかもしれない。というのも、直近のNHKの世論調査では常に1位である「経済対策」は変わらないものの、国民が関心を持つテーマの3番目に僅差で「政治改革」が入っています。 「政治改革」は与党支持層でも強い意向の一方で、「支持政党なし」や野党支持層の間ではより数字が大きくなっています。要するに「政治とカネ」に対する日本国民の怒りは、政治の世界で思われているよりもずっと根深いのではないか。そんな中、岸田さんが総裁選の「不出馬」によって禊を済ませるという主張が、果たして国民に通用するのか。かなり怪しい気がします。 【安田】岸田さんは「派閥」を解散したというけれど、実際のところはどうなのか。我々の目にはわかりにくい面がありますよね。一部には、まだ麻生派が残っていたり、茂木派が「政策集団」に変わるという言い方をしていたり。メディアは「派閥なき総裁選」を謳っていますが、総裁選に立候補するために推薦人を20人集めるといった、根っこのところのルールを変えようという議論も起こりませんでした。 【西田】そうですね。そもそも「派閥の解散」とは何を意味するのか。その本質を政治もメディアも検証していないように思います。「派閥の解散」で最もわかりやすいのは、総務省へ政治団体の届け出を取り下げるということでしょう。しかし、実際に取り下げを行ったのか、というところが判然としません(9月に入って岸田派は提出)。派閥の事務所はどうなったのか、財産や専従職員の処遇はどうなったのか。細かく見ていくと、いろいろと曖昧なまま。 毎週木曜日に集まっての昼食会は各派閥ともやめたようですが、実際に多くの人たちがイメージする「派閥の解散」が本当に成し遂げられたのか。メディアはそこをきちんと検証すべきではないでしょうか(収録語、麻生派を除き、総じて政治団体の届け出の取り下げが確認されている)。