障害があってもなくても一緒に、広がる「インクルーシブ遊具」 公園バリアフリー化の一歩先へ
遊具の開発は医療的ケア児や保護者の協力を得るとともに、福井県で医療的ケア児の支援に取り組む紅谷浩之医師(48)が監修。コモリは平衡感覚に特化した遊具で、余計な刺激をそぎ落としシンプルさにこだわった。というのも、障害や特性のある子供にとって、既存のブランコは視界の急激な変化や、鎖に触れたときの感覚、色味の強さなどの刺激が多過ぎるのだという。
紅谷氏は一生起き上がれない、話すことはない、などと診断された子が友達との遊びを通じ、それぞれの感覚で能力を育みながら奇跡の成長を遂げる様子を幾度も目にした。「アクセスしやすい公園に、障害の有無や特性を気にせず子供同士が工夫して遊べる遊具が増えることは、全ての子供にとって大切なことだ」と語った。
■「遊具で終わりではない」駐車場やバリアフリートイレも
兵庫県立大学大学院の美濃伸之教授(造園学)によると、平成18年に障害者や高齢者の自立した生活を支援するバリアフリー法が成立し、都市公園が対象となったことで、公園のバリアフリー化が進んだ。
しかし主な内容は園路やトイレへの移動の円滑化にとどまり、遊具はバリアフリー化が義務化される対象から外れていたため、障害のある子供が遊びやすい遊具が設置されることは少なかった。
インクルーシブ遊具が全国へ波及したきっかけは令和2年、東京都が「だれもが遊べる児童遊具広場」を構想し、それに基づいた都立砧(きぬた)公園(世田谷区)を整備したことだった。事業計画が報じられて以来、自治体の首長主導で整備が進むケースや、住民の要望によって設置されるケースが増えたという。
ただ、美濃教授は「遊具を置くだけで終わりではない」とも指摘。インクルーシブ公園は聞こえが良く、広がりやすい一方、「遊具の仕様に加え、遊具へのアクセス、駐車場やバリアフリートイレとの近接性などが大変に重要。利用者の声を聞きながら公園を育てていくことが大切だ」とした。(木ノ下めぐみ)