【南海トラフ】水深2650mの海底での調査作業 地震専門家らが進める「ゆっくりすべり(スロースリップ)」の研究 「『ゆっくりすべり』がなければ、能登半島地震は起きなかった」巨大地震の予測への挑戦に密着
装置に入っているのは、荒木さんが開発した「光ファイバーひずみ計」。ひずみ計は地下の動きを測るもので、過去最高の観測精度を誇るといいます。 (荒木さん) 「光ファイバーのケーブルの長さが200メートルぐらいあり、それをステンレス管に巻いたような構造になっています。この装置からデータを送信して、陸上でもセンサーが『ゆっくりすべり』でどう変化したかをモニターできる」
「光ファイバーひずみ計」は、10億分の1メートルのわずかな動きも検知できるといいます。ひずみ計に軽く手で触れただけで―。 (荒木さん) 「光ファイバーが伸びます。『ゆっくりすべり』は、これよりももっと小さな動きを測るので、ひずみ計の感度は非常に高いです」
他にも、水の動きを観測するための「水圧計」を設置。様々なデータで、地下の動きを捉えようとしています。
出航から約2週間後、無事、紀伊水道沖で観測装置の設置に成功しました。
南海トラフ巨大地震の予測につながる、新たな一歩です。
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「やはり準備プロセスは“ゆっくりとしたすべり運動”だろう」能登半島地震をはじめとする地震との関連性があるとみられる「ゆっくりすべり」 研究の現在地
「ゆっくりすべり」は、25年ほど前から研究者の間で注目されるようになりました。2011年の東日本大震災の直前にも、発生していたと考えられています。地震のメカニズムに詳しい東京大学・井出哲教授も、「ゆっくりすべり」と巨大地震には関連性があるとみています。 (東京大学・井出哲教授) 「いきなりドカーンと地震は始まらないこともわかってきていますので、やはり準備プロセスは“ゆっくりとしたすべり運動”だろうと」
実は、「ゆっくりすべり」は日本全国で起こっています。例えば、千葉県東方沖の付近では「ゆっくりすべり」をともなう地震が多発していて、この現象は、おおよそ5年前後の間隔で起きています。このように、「ゆっくりすべり」と地震がセットで起きるパターンもあれば、そうでもないパターンも…。
写真は、「ゆっくりすべり」が起きた場所を図に示したものです。 (井出教授) 「ここは全部、『南海トラフ巨大地震』の範囲です。見ての通り『ゆっくりすべり』はひっきりなしに、どこでも起こっているのが、よくわかります」 「ゆっくりすべり」はこれだけ発生していますが、必ずしも大きな地震につながっているわけではありません。
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