明るい彗星候補「ATLAS彗星(C/2024 S1)」の消滅を確認
2024年9月末、発見されたばかりの彗星「ATLAS彗星(C/2024 S1)」に注目が集まりました。過去に明るい彗星となったものをいくつも含んでいる「クロイツ群」の仲間であると考えられ、楽観的な予測ではマイナス5等級からマイナス7等級と、金星よりも明るくなる可能性が考えられてきました。 ATLAS彗星が消滅する様子が撮影された動画 しかし残念ながら、その夢は儚く散ってしまったようです。太陽に最接近する様子を撮影した太陽観測機「SOHO」は、ATLAS彗星が完全に蒸発・消滅する様子を撮影しました。この出来事は、彗星の明るさ予測がいかに難しいかを示す一例として記録されるかもしれません。
ある意味ではリベンジ?ATLAS彗星の発見
夜空に長い尾を引く「彗星」は、肉眼で容易に観察できるほど明るくなることは稀であるため、明るい彗星の予測はしばしば注目されます。直近では「紫金山・ATLAS彗星(C/2023 A3)」が明るい彗星となり、注目を集めました。 一方で、日本で容易に観察可能になると予測された2024年10月下旬は全国的に天候が悪化し、悪条件の中でも撮影できたとする声もあれば、観察できなかったと嘆く声もありました。筆者も観測機会を逃してしまった側の1人です。 そういった中で注目を集めたのが、2024年9月27日に「小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)」によって発見された「ATLAS彗星(C/2024 S1)」です。まだ正式な仮符号や名前が付与されておらず、「A11bP7I」という暫定名で呼ばれていたころから注目を集めました。なぜなら、ATLAS彗星の公転軌道は、太陽に極めて接近する「クロイツ群」に属する可能性が高いと推定されたためです。 クロイツ群の代表例は、上弦の月に匹敵するマイナス11等級となった1965年の「池谷・関彗星(C/1965 S1)」です。ATLAS彗星はそこまで明るくならないと予測されていたものの、それでも楽観的な予測では、2024年10月下旬から11月上旬にかけてマイナス5等級からマイナス7等級と、金星よりも明るくなると予測されていました。これは紫金山・ATLAS彗星のマイナス4.8等級よりずっと明るい値です。 なお、彗星の名前は、それを発見した人物・団体・システムが最大で3人まで自動的に割り当てられます。ATLAS彗星(C/2024 S1)と紫金山・ATLAS彗星(C/2023 A3)は名前が似ていますが、同じシステムで発見されたこと以外は無関係の天体です。また「ATLAS彗星」という名前はこれまでに82個の彗星(※1)に割り当てられていますし、今後も割り当てられることがあるはずです。混同を避けるため、仮符号の併記や、そもそも名前で呼ばないケースもしばしば見られます。 ※1…C/2019 Y4のような分裂核を数えず。 名前が似ているだけの他人の空似、全く別の存在とは言え、紫金山・ATLAS彗星のリベンジとしてATLAS彗星に期待していた人もいたでしょう。