<おむすび>阪神・淡路大震災を真正面からリアルに描く第5週 制作統括&演出に聞く舞台裏
「そのときは高校生で、大変なことが起きてるな、という印象でした。東日本大震災のときは、東京で実際に揺れを感じたんですけれど、何もできない自分もいて。どちらも傍観者でしかいられなかったからこそ、そんな自分に対して何かできないのかと思い、(阪神・淡路大震災から)30年という節目で、未来につなげられないかと考えました」
震災を描くに当たって、宇佐川さんも「取材をいくらし尽くしても、被災者の方々の気持ちを全部は理解できない。本当に100通りの皆さんの思いがあります。ただ、『それでも寄り添いたい、理解したい』と思い続けることが大事だと思い、これまでやってきました。分かったふりをせず、分かろうとする歩みを止めないということが、テーマとして現場にはありました」と力強く語る。
◇当事者を現場に呼んで“囲み取材”? 避難所での生活をリアルに描く
震災そのものの描写について、松木さんは「被災者の方たちにも見てもらうことを考えると、繊細な配慮は必要だろうなと感じ、字幕を出すなど意識して」演出したという。
さらに今回、リアルに描いたのは避難所での被災者の生活だった。
「当時、避難所の管理をしていた学校の先生や市役所の職員さん、地域のリーダーといった方たちに現場に来ていただいて、『このときは一体どういう状況だったのか』をスタッフが取り囲んでインタビューしまくりました。地震発生から3時間後の状況はどうでしたか? このときカーテンは開いてますか? ストーブはありましたか? 壁の貼り紙は? ガラスは落ちていましたか?など、時系列を追って一つずつ全部聞いていったんです」と明かす。
取材で印象に残ったこととして、松木さんは「地震から割と早めに、避難所を自分たちの力でなんとかするんだって思いがすごく強くて、そこからの工夫と知恵にとても感動しました」と興奮気味に語る。
「自分たちですぐルールを作ったり、食料を自分たちで集めたりと、支援が来る前にみんなが自分たちで動いていた、と。震災4日目、5日目にして、名簿を作ったり、部屋を土足禁止にしてダンボールを敷いて区分けしたりと、誰に何を言われるでもなく自分たちでやっていたというエピソードにとても感動したので、ドラマに入れております」