「『AKIRA』が大好きで研究した」伝説の米国人スタイリストが語る日本文化のストリートファッションへの影響
実際、私はアンブローズのスタイリングが話題になった最初のミュージックビデオを見て驚いたことを覚えている。それは、ヒップホップアーティストのミッシー・エリオットの曲 「Get Ur Freak On」のミュージックビデオだった。 ビデオの冒頭で、日本人のダンサーがスプリットをしてポーズをとり、カメラに向かって言う。「これから皆でめちゃくちゃ踊って騒ごう!」なぜ日本人なのだろう、と思った記憶がある。
■「AKIRA」は研究した映画の1つ 「この国の建築やアニメにインスピレーションを受けたんです」とアンブローズは説明する。「1980年代の『AKIRA』を覚えていますか? あれは私が大好きで研究していた映画の1つなんです。バスタ・ライムスやミッシー・エリオットのように、私の作品ではつねに未来志向の日本的なアプローチをとっています」とアンブローズは語る。 アンブローズは、未来志向について、自分の作品に「ハイパーリアリティ」や現実の誇張版を少し加え、日本のアニメやアメリカの漫画の要素を取り入れ、2つの世界を融合させたものだと説明する。世の中にある「テンプレート」を利用するのではなく、自ら独自のテンプレートを作ることで新たな道を切り開いたのだ。
これは彼女のファッションへのアプローチにも当てはまる。 「コム・デ・ギャルソンと、メンズファッションを女性のためにデザインするアプローチについて考えてみて」とアンブローズは言う。 「そういう反抗と破壊が、私がヒップホップカルチャーにアプローチする方法です。ルールを破り、みんなが考えるヒップホップ文化には迎合しない。文化的な属性を曲げ、再解釈し、再構築するのです。例えば、着物の袖や日本のタペストリー生地をボンバージャケットのようなものに変えることです」
日本人がどのように魔法をかけるのか、できるだけ多くのことを吸収するために、今回の来日でもアンブローズは日本のファッション界の火付け役、著名な編集者、トレンドセッターたちを訪ね歩いた。 その中には、ヴェルディ(Girls Don't Cry)、藤原ヒロシ(fragment design)、ユン(Ambush)、そしてアンブローズのインスピレーションでもある阿部千登勢(Sacai)、その他大勢のインフルエンサーがいた。