架線柱の倒壊や線路冠水……相次いだ鉄道トラブル 安全対策は?
施設老朽化による輸送障害が1割
輸送障害の原因はさまざまなのでゼロにすることはできませんが、少しでも輸送障害を減らすことはできないのでしょうか。総務省行政評価局はこう説明します。 「輸送障害のうち、明らかに施設の老朽化に起因するものが約1割とされています。輸送障害を減らすには、鉄道施設の適切な維持管理が大事になるでしょう。わが国のインフラは、大半が建設から50年以上経過しています。それは鉄道施設も例外ではありません。そうした状況から、政府は2013年に『インフラ長寿命計画』を策定しました。これは、鉄道だけを対象にしたものではなく、道路や農道、橋梁、港湾、空港、下水道、学校施設、公民館、博物館などインフラ全般を対象にしています」 政府がインフラ長寿命計画を打ち出した背景には、高度経済成長期に建設されたインフラが多いが、それらをすべて新しくつくり直すことはできないという財政的な問題、時間や労力が膨大になってしまうといった事情があります。政府は定期的に検査を実施すればインフラが長寿命化でき、結果的に費用負担を少なく抑えられるとしています。
鉄道会社や国交省のチェックは大丈夫?
政府が長寿命化計画を打ち出さなくても、もともと鉄道事業者には施設を定期的に検査する義務が課されています。鉄道事業者が定期検査をきちんと実施しているかを監督するのが国土交通省です。 ところが、鉄道事業者を監督するという国土交通省に課された使命が果たされていないことが露見する事件が起きました。2013年のJR北海道によるデータ改ざんです。 JR北海道は検査データを改ざんし、それが事故につながりました。JR北海道は信頼を失うことになりましたが、それと同時にJR北海道のデータ改ざんを見抜けなかった国土交通省の信頼性も揺らぎました。そのため、総務省行政評価局が乗り出す事態になったのです。 「以前から、総務省行政評価局は『インフラの安全が確保されているのか』『それを所管官庁が監督できているのか』を調査しています。2008年度は道路・橋梁・農道、2010年は港湾や空港のチェックをしました。このほど、鉄道施設をチェックしたのは、JR北海道の件があったからです。総務省行政評価局は、2014年8月から12月までに鉄道の線路・橋梁・トンネルを調査しました。すると、10件の定期検査未実施が判明したのです。ところが、それを国土交通省は把握していませんでした。そのため、同省に鉄道事業者への指導・監督のやり方を改めるように勧告したのです」