阪神・近本が大学時代から使い続ける相棒バット 阪神入団後も「使いたい」社長に伝えた熱意
「DeNA9-6阪神」(20日、横浜スタジアム) 阪神はDeNAに痛恨の1敗。首位・巨人とのゲーム差が3に広がる敗戦にあって、意地を見せた一人が近本光司外野手(29)だ。四回2死一、三塁で放った追撃の左翼線適時二塁打が、長嶋茂雄(巨人)に並び史上トップタイとなる、プロ入りから6年目での通算926安打目となった。 【写真】近本を支えるヤナセバットのスタッフら ◇ ◇ 最高の相棒とは、投手から野手に転向した大学1年冬に出会った。一途に使い続けるヤナセ社のバット。担当の北村裕さんは「すごい縁でつながって、熱い思いを持って使い続けてくれている」と感謝する。 手にするきっかけを作ったのは山本大貴さん。近本とは保育所から中学まで同じという幼なじみで、神港学園(兵庫)時代には高校通算107本塁打を記録している。その後に進んだJR西日本の野球部在籍時、野手転向でバットが必要になった近本に、北村さんを紹介。近本は数本の中からグリップが細く、ヘッドバランスで先が丸くないバットを選んだ。 近本は大阪ガス入りすると、力のある投手の球速に負けないために長さを5ミリ長い85センチに変更。重さ890グラムの“相棒”が完成した。北村さんは「プロに入ってからグリップを変えたり、長さを変えたり、素材を変えたりしても、結局は初めて作ったバットに戻る。いろいろ変えたりする選手がいる中で、なかなかこういう選手はいない」と明かした。 「アマチュア選手にいいモノを」をモットーにしているヤナセバット。プロに提供するという考えはなかった。阪神入団後も使い続けたかった近本は、当時の社長であり創業者の柳瀬隆臣さん(一昨年他界)に直接、バットに対する思いを伝えた。その熱意が伝わり、提供が決まったいう。 今回の記録はまだまだ通過点に過ぎない。「ある時期に200安打を目指したいと言ったことがあった。『長距離を打つのではなく、安打を求めてやります』と言ったのがすごく印象に残っている。常に自分を見つめて、進化をして。彼ならもっと先に行ってくれると思います」と北村さん。頼もしい相棒とともに近本はさらに高みを目指している。(デイリースポーツ・井上慎也)