Ⅲ期卵管がんの術後化学療法はどうすれば? 5年生存率が気になります がん電話相談から
今回の「がん電話相談」は、Ⅲ期の卵管がんの術後化学療法の治療に悩む60代女性に、がん研有明病院の元婦人科部長、瀧澤憲医師が答えます。 --20年前に子宮筋腫を患い、子宮と左卵巣・卵管を切除。令和6年6月、婦人科検診で腫瘍マーカーのCA125が250に上がり、CT検査で右卵巣が腫れていました。卵巣がんを疑い、腹腔鏡で骨盤内を精査して右の卵巣・卵管を切除。病理検査の結果、右卵管が原発の高悪性度漿液(しょうえき)性卵管がんと診断されました。7月、PET-CT検査で傍(ぼう)大動脈リンパ節転移が疑われ、8月に骨盤と傍大動脈のリンパ節を郭清。2個のリンパ節転移があり、Ⅲ期でした。 「大動脈のリンパ節に転移があったのですね」 --腹腔鏡手術のときは腹水も腹膜播種(はしゅ)もなく右卵管にがんが限局したⅠ期との診断でした。傍大動脈リンパ節への転移が確認され、Ⅲ期にステージが上がりました。 「卵巣がんは半分程度がI期ですが、卵管がんでは極めて少なく、大部分が腹膜播種やリンパ節転移を伴ったⅢ期で見つかります。相談者のようにⅢ期でも腹膜播種を伴わず、傍大動脈リンパ節転移のみというのはまれです。術後はどのような治療を?」 --9月から、抗がん剤のパクリタキセル(商品名タキソール)、カルボプラチン(パラプラチン)を併用するTC療法を始めました。2サイクル目から抗血管新生作用を持つ分子標的薬のベバシズマブ(アバスチン)が加わりました。 「いずれも以前から卵巣・卵管がんの治療に使われてきた標準的な治療薬です。さらに数年前から、摘出されたがん組織を用いたHRD検査(相同組み換え修復欠損の有無を調べる遺伝子検査)や、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の可能性を調べるBRCA遺伝子変異の検査で、いずれも陽性ならTC療法の終了後に、ベバシズマブとPARP阻害剤のオラパリブ(リムパーザ)の2剤併用した治療を追加するのが標準になりました」 --私はともに陽性でした。ベバシズマブとオラパリブの併用治療を2年間行う予定です。予後(5年生存率)はどうですか。